インデックス・プロバイダー

インデックス・プロバイダーは市場インデックスを設定・算出し、パッシブ運用商品の基盤となる知的財産のライセンスを発行する専門性を備えた企業です。

インデックス・プロバイダーの業務は、以下の4つの明確な段階に分けることができます。

インデックス・プロバイダーの重要性

インデックス・プロバイダーの業務は極めて重要です。 世界の金融の専門家や投資家は、市場のパフォーマンスに関するリアルタイムでの情報収集においてインデックスを重視しており、また、投資や経済活動の意思決定において、その重要性の大小にかかわらず、インデックスのデータを情報源として利用しています。

加えて、6兆米ドルを超える資産が市場インデックスのパフォーマンスに連動しています。これらの資産を運用する投資の専門家は、安定したインデックスの構築、綿密なインデックスの維持・管理、さらに途切れることのないデータ配信において、インデックス・プロバイダーに依存しています。

インデックス・プロバイダーのビジネス・モデルは、知的財産が集積した特別な商品を作り、通常はデジタル化して配信するというソフトウェア企業と対比できます。ソフトウェア企業のように、インデックス・プロバイダーの業務は、新商品の開発、ライセンス化、商品の配信、関連するサービスとサポートの提供が中心となっています。

インデックス・プロバイダーの業務は何ですか?

インデックス・プロバイダーが何を行うかを理解するには、「何をしないか」といった点を考慮するほうが実際には有効でしょう。

手掛ける業務

  • 市場の動きを測定
  • 投資パフォーマンスを測定するベンチマークを提供
  • インデックスの維持・管理と算出
  • 投資商品の基盤となるインデックスのライセンスを発行

行わない業務

  • 市場動向の予想
  • 投資助言の提供
  • 資金運用
  • 投資商品の発行または販売

概念化と設定

インデックスを概念化して構築するためには、資産クラス、市場メカニズム、証券の分類に加え、最終的にインデックスと連動する投資商品に対する深い理解が必要となります。

インデックス設定のプロセスは一つのアイディアから始まります。設定が可能な全てのインデックスは、その目標がそれぞれ異なるとしても、明確で健全な目的がなければなりません。この時点から、インデックス・プロバイダーはインデックス設定に着手する前に、以下の問いに答えることになります。

例えば、あるインデックスが米国の中型株、欧州の債券、または金価格をカバーするとします。対象となる市場は、インデックスの「ユニバース」、「エクスポージャー」、「投資対象の集合」と表現されることがあります。ユニバースには、例えば「日本のテクノロジー関連大型株」のように非常に正確なものもあれば、「高配当低ボラティリティ株式」といったより複雑なものもありますが、常に明確に定義され、容易に定量化できなければなりません。

この問いに対する答えは、インデックス構成銘柄の価格が直ちに確認できる公開されたものかどうかによります。構成銘柄の価格が不明な場合、信頼できるインデックス値を決定することはできません。さらに重要なこととして、インデックス・プロバイダーは、インデックス内の証券が十分な流動性を備えていることを確実に把握していなければなりません。これは、インデックスの構成銘柄または構成比率に変更があった場合、インデックスのパフォーマンスの再現を図る金融機関が、インデックス構成銘柄の十分な量を確保できるようにするためです。

インデックスは、ベンチマーク、またはインデックスをベースとする商品としての有用性を備える必要があり、確実に特定のニーズに応え、かつ、市場性を有することが不可欠です。潜在的な利用者に価値をもたらすものでなければ、インデックス・プロバイダーが当該インデックスを構築するとは思われません。

インデックスをベースとした商品の基準となるよう、ライセンスを発行する前提でインデックスを構築する場合、インデックス・プロバイダーは、インデックス内の証券や他の金融商品が十分な流動性を備えていることを確認する必要があります。その結果として、インデックスのパフォーマンスの再現を図る金融機関は、インデックスを構成する証券や金融商品の十分な量を当初から確保でき、また、リバランスによって構成銘柄のウェイトに変更があった場合でも、容易に対応できるのです。

インデックスの算出とデータの配信

インデックスの構成銘柄が選定され、組入比率が決定されると、インデックス・プロバイダーはメソドロジーに従ってインデックスの算出を開始します。大半のインデックスは日次で計算され、その多くはリアルタイムで実施されます。

例えば、ダウ平均は2秒ごとに算出されます。ただし、ごく一部のインデックスについては、入力するデータの取得状況に基づき、月次または他のタイミングで算出されることもあります

インデックス・プロバイダーはこれらのインデックス値を、自社のウェブサイト、ブルームバーグやロイターなどのデータ再配信会社経由、インデックス使用のライセンス保有者へ直接データファイルを送信する形式など、様々な方法で配信します。インデックスが構築される際に「バックテスト」が実施されて、過去の日次のインデックス値が算出される場合もあります。これらのバックテストで算出された値は、現時点でのインデックスのメソドロジーで組み入れた証券に過去のデータを適用することによって得られ、当該インデックスが過去に存在した場合、どのようなパフォーマンスだったかの推定値を示します。ただし、バックテストのデータは、インデックスがどのようなパフォーマンスを示したかを理論的に推定する情報として提供されるだけで、その解釈には注意が必要です。そして過去のパフォーマンスは実在のものであれ、理論モデルに基づくものであれ、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。

バックテストのデータとは何ですか?

バックテストのデータには、インデックスが設定日よりも前に存在していたと仮定した場合、
どのようなパフォーマンスを示したかを表すインデックス値が含まれています。

維持・管理とリバランス

インデックスが公表されると、それが24時間、1年中休みなく機能するよう、リアルタイムでの継続的なモニタリングと日次の維持・管理が始まります。

市場やその他の状況は、インデックスに組み入れられる証券の価格に影響を及ぼすため、インデックス・プロバイダーは定期的にインデックスのリバランスを行う必要があります。定期のリバランスでは、各構成銘柄が採用基準を満たしていることを確認し、インデックスのメソドロジーに基づいて、どの銘柄を追加または除外するかを判断し、新たな組入比率を確定することがインデックス・プロバイダーに求められます。

継続的な維持・管理には、企業の合併、分社化(スピンオフ)、株式分割、配当や利払いなど、インデックス構成銘柄に影響を与えるコーポレートアクションに関する情報入手が含まれ、それが実際に起きた場合は、変更をインデックスに反映させます。例えば、インデックス内の企業が非公開になった場合、当該銘柄が取引所で売買されなくなるため、インデックスから除外されます。

ライセンスの発行とサポート

インデックス・プロバイダーは、資格要件を満たした企業にインデックスの使用ライセンスを発行し、インデックスを利用する際に必要なサービスやサポートを提供することで契約の継続を促すとともに、インデックスを市場に広めることを事業目的とします。

商品需要を喚起するため、インデックス・プロバイダーは以下の業務を行います。

  • 資産運用会社やその他の金融機関にインデックスの使用ライセンスを発行すること。これにより、インデックスを利用したETFやインデックスをベンチマークとしたポートフォリオなど投資可能な金融商品の設定に加え、リサーチや分析が可能になります。
  • テレビや金融関連のウェブサイトでリアルタイムのインデックス表示が可能になるよう、メディアに対してインデックスの使用ライセンスを発行すること。

インデックス・プロバイダーは顧客のサポート業務を行うとともに、提供するサービスを通してインデックスの市場における認知度の向上を図ります。ファイナンシャル・アドバイザーやその他の仲介業者との関係を築き、インデックスをベースとした商品に対する顧客の理解度を高めてもらうことで、インデックス投資への支持を増やし、結果的にインデックスに対する需要の拡大を図ります。

インデックス・プロバイダーの比較

全てのインデックスが同様とは限りません。 
それはインデックス・プロバイダーにも該当します。

そのため、優れたインデックス・プロバイダーと、期待外れの恐れがあるインデックス・プロバイダーをいかに判別するかは重要です。以下の5つの特徴に注目することは、その方法の一つです。

第2章が終了しました。

この章で学んだことを確認するために、 簡単なテストを行います。

01 インデックス・プロバイダーの業務は次のうちのどれですか?
02 インデックスのリバランスで一般に考慮されることは次のうちのどれですか?
03 インデックス・プロバイダーは誰に対してインデックスの使用ライセンスを発行しますか?
04 バックテストのデータを解釈する上で注意が必要なのはなぜですか?
05 指数構築においてインデックス・プロバイダーが一般に考慮する要因は次のうちのどれですか?
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