メソドロジーは重要

インデックスのメソドロジーは、インデックスがどのように機能するかに影響を与える規則を含み、最終的にインデックスのパフォーマンスを決める要因となります。

インデックスのメソドロジーは主に、以下の4つの要素で構成されています。

インデックスの設計図

2つのインデックスが同じ市場を再現している場合、同じ結果になると思うかもしれませんが、そうしたことは、皆無ではないものの、ほとんど起こりません。

全く同じメソドロジーを使用していない限り、リターンが実際に同じになることはなく、時には大きく異なります。したがって、インデックスが使用しているメソドロジーとそれがパフォーマンスに与える影響を理解することは、インデックス・ベースの投資商品を保有する投資家が増加している中で、特に重要だと言えます。

大まかに言えば、インデックスのメソドロジーはインデックスの設定、計算、維持・管理を司る規則や基準をまとめたものです。インデックスへの採用基準を満たす証券、インデックス値を算出する数式、構成銘柄を変更するプロセス、及び更新の予定は、この規則によって決まります。

インデックスのメソドロジーは複雑かもしれませんが、理解できないものではありません。実際、インデックスのメソドロジーの中心的特徴の一つは透明性です。主要インデックス・プロバイダーの大半はインデックスのメソドロジーを公表しており、複製が可能です。

投資家にとっては、インデックスのメソドロジーがそのインデックスの特徴やパフォーマンスを最終的に決定する設計図であると認識することが重要です。なぜなら、似たようなインデックスに連動しているETFの中から投資先を選択する場合、各インデックスのメソドロジーの中心的な要素を理解する必要があるからです。そうすることで初めて、十分な知識に基づいて自らの投資目標に沿ったETFを選択することができます。

構築

インデックスのメソドロジーの中で非常に重要なのが、構築方法を定める規則です。

これらの規則によって、どの証券をインデックスに組み入れ、どれを除外するかが決まります。インデックス・プロバイダーは主に以下の2つの要素を考慮して規則を設定します。

インデックスの使用目的には、ポートフォリオのパフォーマンスを測定する基準とすること、ETFやミューチュアル・ファンドなどの投資商品の土台とすること、およびリサーチの支援材料とすること、またはそれらの組み合わせがあります。

インデックスは市場の需要を受けて設定されることもあれば、インデックス・プロバイダーの専門家チームが、特定の市場または具体的な投資戦術や投資戦略に機会を見出し、それを再現するインデックスを設定しようとする場合もあります。

動きが再現可能であれば、ほとんどすべての市場セグメントがインデックスの対象になります。例えば、資産クラス、サブクラス、セクター別のインデックスが考えられます。特定の国に特化することも、経済的、地域的に類似の特徴を持つ複数の国を対象にすることも、あるいはグローバル市場を対象にすることも可能です。また、配当収入やリスク管理など、特定の戦略やテーマに基づいてインデックスを設定することもできます。

どのようなエクスポージャーを目指すかによって、インデックスへの採用候補であるユニバースが決まり、その中からインデックスの組入基準を満たす証券または資産クラスを組み合わせます。ユニバースの特徴で最も重要なのは、インデックスに組み入れる可能性がある資産タイプの価格が公表されていることです。これらの価格はインデックスの算出結果に信頼性を与える不可欠な要素です。

適格性基準と選択基準

適格性基準と選択基準によって、証券の適格性、および最終的にインデックスに組み入れるか否かが決定されます。一般的な基準には、証券の時価総額、発行体の本社所在地、証券の通貨などがあります。例えば、時価総額50億ドル以上の米国株式といった条件や、テクノロジー株だけを適格にするという条件も可能です。

資産や証券が売買される頻度を示す流動性が重要な適格性基準と見なされるケースも多々あります。インデックスを投資商品の連動対象に使用する場合、流動性は、インデックスを複製したい商品プロバイダーが商品のポートフォリオ構築用に資産を容易に購入できるかどうかを判断するための重要な尺度になる場合があります。そのため、流動性が低い、すなわち取引頻度の少ない証券は、他の基準に合致していてもインデックスから除外されることもあります。

インデックスの使用目的および意図するエクスポージャーに応じて、株価収益率(PER)や配当利回りなど、財務関連指標やファンダメンタルズを含む要素も選択の条件に採用されることがあります。

銘柄を選択するための条件には様々な種類があります。例えば、シャリア指数は、シャリア(イスラム法)の観点から、イスラム投資家が容認しがたい製品やサービスを提供する企業の株式を除外しています。持続可能性インデックスは、環境関連の条件に基づく最低基準を満たさない企業を除外しています。

多くの指数メソドロジーでは、こうして特定された適格資産を一つ以上の選択基準に基づいてさらにランク付けし、上位の銘柄のみをインデックスに組み入れます。例えば、S&P500指数は通常、他の適格基準に適合した米国株式の中から、時価総額の大きい銘柄を選択します。

適格基準:

ダウ・ジョーンズ米国好配当100指数を例に、銘柄がどのようにして選択されるかを見てみましょう

ユニバース 米国で取引されている株式のうち時価総額上位 2,500銘柄et(REITを除く) 配当実績に関する選択基準 配当支払いを10年以上連続して実施  規模に関する選択基準 浮動株調整後時価総額が最低5億ドル  流動性に関する選択基準 1日当たりの売買高の3ヵ月平均が最低200万ドル  配当利回りに関する選択基準 年間配当利回りが上位50%以内  ファンダメンタルズに基づく選択基準 残りの銘柄を、有利子負債に対するキャッシュフ ローの比率、己資本利益率(ROE)、 配当利回り、 配当成 長率によってランク付けします。 ランク上位の 銘柄からインデックスに組み入れます。

加重法

インデックスの構成銘柄が決まると、証券がインデックスのパフォーマンスに与える相対的な影響力を決定するウェイトを各資産に割り当てます。

ウェイトの仕組みを理解するために、ダウ平均®を見てみましょう。ダウ平均は非常にシンプルな加重法(価格加重)を使用しています。例えば、ダウ平均の構成銘柄であるメルクの株価が90ドルで、全構成銘柄の株価の合計が4.300ドルとすると、ダウ平均におけるメルクのウェイトは90ドル/4,300ドル = 2.1%となります。同様に、ダウ平均の構成銘柄であるVisaの株価を180ドルとすると、ウェイトは180ドル/4,300ドル = 4.2%となります。Visaのウェイトはメルクの2倍になるため、Visaの株価が10%変動した場合にダウ平均のパフォーマンスに与える影響はメルクの株価が10%変動した場合の2倍になります。

価格加重は最もシンプルな加重法ですが、あまり使われていません。株価以外の要因を考慮した加重方法の方が一般的です。

加重方法がインデックスに与える影響とは?

加重の方法によって、インデックスの構成銘柄がどのように変化するのかを見てみましょう。

インデックスを均等加重すると、全ての構成銘柄がインデックスのパフォーマンスに同じ影響を与えます。

インデックスを株価で加重した場合、株価が最も高いA社がインデックスのパフォーマンスに最も大きな影響を与えます。

インデックスを時価総額で加重した場合、時価総額が最も大きいB社がインデックスのパフォーマンスに最も大きな影響を与えます。

会社名
株価
発行済み株式数
時価総額
ウェイト
A
159.08
×
206,240,000
=
$32,808,659,200
%
B
106.48
×
517,521,740
=
$55,105,714,875
%
C
13.61
×
439,280,860
=
$5,978,612,505
%
D
62.22
×
386,234,640
=
$24,031,519,301
%
E
50.37
×
98,118,740
=
$4,942,240,934
%
会社名
株価
発行済み株式数
時価総額
A
159.08
×
206,240,000
=
$32,808,659,200
B
106.48
×
517,521,740
=
$55,105,714,875
C
13.61
×
439,280,860
=
$5,978,612,505
D
62.22
×
386,234,640
=
$24,031,519,301
E
50.37
×
98,118,740
=
$4,942,240,934
ウェイト

計算

インデックスの計算方法を知ることは、インデックスが市場のパフォーマンスをどのように測定するかを理解するのに役立ちます。

インデックス値は取引時間を通じて1秒ごとに計算・公表されます。このように「毎秒」ごとにインデックスを算出するために標準化された手法、数式、計算方法が用いられています。

インデックス値の計算方法とは?

クリックすると、一般的な時価総額インデックスの計算方法が表示されます。

各構成銘柄の現在株価に発行済み株式数を掛けて、各銘柄の時価総額を算出します。

構成銘柄の時価総額を合計して、インデックスの時価総額を算出します。

インデックスの時価総額を除数で割って、インデックス値を算出します。

会社名 株価 発行済み株式数 時価総額
A 159.08 × 206,240,000 = $32,808,659,200
B 106.48 × 517,521,740 = $55,105,714,875
C 13.61 × 439,280,860 = $5,978,612,505
D 62.22 × 386,234,640 = $24,031,519,301
E 50.37 × 98,118,740 = $4,942,240,934
指数時価総額 $122,866,746,814
除数 ÷ 34,938,376
指数値 = 3,517
会社名
株価
発行済み株式数
時価総額
A
159.08
×
206,240,000
=
$32,808,659,200
B
106.48
×
517,521,740
=
$55,105,714,875
C
13.61
×
439,280,860
=
$5,978,612,505
D
62.22
×
386,234,640
=
$24,031,519,301
E
50.37
×
98,118,740
=
$4,942,240,934
指数時価総額
$122,866,746,814
除数
÷
34,938,376
指数値
=
3,517

インデックスのリターンは、ある時点のインデックス値を次の時点と比較して求めます。例えば、ある日の取引終了時点のインデックス値が1,878.48で、翌日の終値が1,894.86の場合、その差異は16.38で、価値が0.87%上昇したことを示します。

バックテストのデータに基づくパフォーマンス

インデックス・プロバイダーは、インデックスのメソドロジーが定める規則や過去に存在した証券ユニバースの長期実績を用いて、当該インデックスが導入された日(「設定日」)よりも前に存在していた場合のパフォーマンスを推定できます。ただし、バックテストのデータを基に算出したデータは理論値にすぎず、実際のデータと同じでないことを認識することが重要です。

除数を使用

除数はインデックスの計算にとって重要です。インデックスの開始時に設定される任意の数字ですが、通常公表されています。除数はインデックスの水準を算出する際、計算式の分母に適用し、分子にはインデックスの構成銘柄の時価総額の合計金額を用います。分子の数値はすぐに数兆ドル規模になるため、比較しやすいように縮小するのが除数の最初の役目です。

除数のさらに重要な役割は、銘柄入れ替えや浮動株の調整があってもインデックスの継続性を維持することです。そのために、除数はインデックス値に影響を与える変化(株価変動を除く)が打ち消されるように定期的に調整されています。そうした変化には株主割当、スピンオフ、特別配当の支払いなどがあります。

さらに、除数の調整は取引の終了後に行われます。そのため、構成銘柄の株価は変わらないという想定で、変更前のインデックスの終値は翌営業日の始値と同じになります。

均等加重インデックスと価格加重インデックスの除数調整は、時価総額加重インデックスと異なります。しかし、インデックスの構成銘柄に対する変更に関係なくインデックスの水準を一定に維持するという原則は同じです。例えば、株式分割を実施しても時価総額は変わらないため、時価総額加重インデックスでは株式分割を調整する必要はありません。ただし、価格加重インデックスの場合、株価が分割前の半分またはそれ以下になる場合があり、重要な要因であるため調整が必要です。

リターンの種類

株式インデックスと債券インデックスは通常、プライス・リターン指数またはトータル・リターン指数として計算されますが、S&P500指数など多くのインデックスは、両方の方法で算出しています。

プライス・リターンのみを計算する場合、インデックス値の変化は構成銘柄の価格の変化、または未実現のキャピタル・ゲイン及びキャピタル・ロスを反映しています。一方、トータル・リターン指数の場合、インデックス値の変化は、価格の変化と、配当その他の現金支払いの再投資によるインカムによって決まります。したがって、構成銘柄に配当支払いがある株式インデックスのトータル・リターンは、常にプライス・リターンを上回ります。

インデックスのトータル・リターンの計算と、追加株式を購入するために配当収入を再投資するミューチュアル・ファンドなど、インデックス・ベースの商品のトータル・リターンの計算は異なります。インデックスにおいては、配当は変化するインデックスの水準を計算する際の追加的な要素になります。

コモディティ・インデックスは、トータル・リターンまたは超過リターン、あるいはスポット・インデックスとして計算されます。これらの種類のリターンの計算方法に関しては、S&P GSCIのメソドロジー を参照してください。

レビュー

インデックスのメソドロジーにおいて極めて重要な点は、インデックスが目的から逸脱しないようにすることです。

そのためには、証券の追加・除外によって、インデックスを構成する銘柄を順次変更する必要があります。また、実際に売買可能な株式数を反映するように、通常は株式数を更新する必要があります。

大半のインデックスでは、証券の追加・除外は通常四半期ごと、または1年ごとに実施される定期的なリバランス時に同時に行われます。この時、インデックス・プロバイダーは、メソドロジーが定める条件に最も適した証券を選択するため、銘柄選択プロセスを実質的にもう一度行います

ほとんどのインデックスでは、銘柄の除外は企業がインデックスの適格性要件を満たさなくなった場合、またはインデックスの選択基準により相応しい企業が他に現れた場合に実施されます。他にも、発行企業が買収や非公開化された場合や、他の企業と合併した場合には除外が義務付けられています。いずれのケースも、除外の根拠は明らかにされます。

また、大半のインデックスのメソドロジーでは、上場廃止や倒産などの重大なコーポレート・アクションが生じた場合、予定されている次回のレビューまでの間は、当該証券をインデックスから除外するよう規定されています。

第5章が終了しました。

この章で学んだことを確認するために、簡単なテストを行います。

01 インデックスの除数において、次の中で考慮されないものはどれですか?
02 各リバランスの間に起こることは何ですか?
03 通常、指数構成銘柄の選択において用いられない基準は次のうちどれですか?
04 浮動株調整を行う目的は何ですか?
05 加重指数において最も一般的な方式はどれですか?
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