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Kensho指数の相関

ムーンショット:成長性に注目した投資テーマ

ボラティリティ、暗号通貨、及びリスク・コントロール指数

スマートファクトリーの実現によって供給不足を解消

オミクロン株の出現とアルファの関係性

Kensho指数の相関

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Anu R. Ganti

Head of U.S. Index Investment Strategy

S&P Dow Jones Indices

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、多くのアクティブ運用マネージャーは2021年、市場をアウトパフォームすることができませんでした。これは、特に驚くことではありません。実際に、昨年における米国と世界の投資環境はアクティブ運用にそれほど適したものではありませんでした。

ばらつきと相関を見ることで、銘柄選択に適した投資環境であるかどうかを分析することができます。他の全ての条件が同じと仮定した場合、ばらつきが平均よりも大きければ、アクティブ運用マネージャーにとって有利な投資環境であると考えることができます。これは、ばらつきが大きければ、アクティブ運用マネージャーの銘柄選択スキルがより有効に機能するためです。相関の解釈の仕方はより複雑です。アクティブ運用マネージャーのポートフォリオは通常、指数のポートフォリオと比べて分散度合いが低く、かつボラティリティが高いと言えます。相関が高い場合には、相関が低い場合と比べて分散投資の効果が薄れます(より分散されたポートフォリオではボラティリティが低くなる)。

相関が平均より高ければ、アクティブ運用マネージャーにとって有利な投資環境であると考えることができます。これは、相関が高ければ、集中ポートフォリオの機会コストが低下するためです。当社では、集中投資のコストを、ポートフォリオのボラティリティに対する構成銘柄の平均ボラティリティの比率と定義しています。集中投資のコストが高いことは、機会コストであり、アクティブ運用マネージャーが克服すべきハードルが高いことを意味します。

S&P Kenshoニュー・エコノミー指数のユニバースは、S&P 500®のユニバースと比べてばらつきがより大きい一方、相関がより低くなる傾向があります。これは、当然であるとも言えます。実際に、Kensho指数の構成銘柄は、世界産業分類基準(GICS®)の枠組み内の銘柄と比べて、より特異な性質を持っています。

図表1では、2021年において、S&P Kenshoニュー・エコノミー・コンポジット指数のばらつきと相関が低下したことを示しています。

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ムーンショット:成長性に注目した投資テーマ

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Srineel Jalagani

Senior Director, Thematic Indices

S&P Dow Jones Indices

S&P Kenshoムーンショット指数(ムーンショット指数)は、成長の初期段階にある次世代のイノベーション企業を中心に構成された革新的な戦略です1。以前に投稿したブログ2でも紹介したように、ムーンショット指数に組み入れられているアーリーステージのイノベーション企業は、中堅イノベーション企業よりも市場で高く評価されており、これらを大幅にアウトパフォームしています。新型コロナウイルスによる経済への影響が長期化し、企業や消費者が新たな環境に順応しつつある中で、イノベーション企業に対する注目が高まっています。

ムーンショット指数の最近のパフォーマンスは不安定に推移しており、2021年12月と2022年1月の月次リターンは大幅なマイナスとなりました(図表1参照)。また、ベンチマークであるS&P 小型株600®指数に対するムーンショット指数の相対パフォーマンスも不安定に推移しており、ムーンショット指数は2021年12月と2022年1月にベンチマークを大幅にアンダーパフォームしました(図表2参照)。変動の激しい相場展開が続いていますが、ムーンショット指数の2022年2月16日現在の値はパンデミック発生前の水準を約15%上回っています。

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ボラティリティ、暗号通貨、及びリスク・コントロール指数

よく言われることですが、ボラティリティはビットコインの「特性」であり、ひいては暗号通貨市場全体の「特性」でもあります。

「特性」という言い方が適切ではないと考える人もいるかもしれませんが、暗号通貨市場は非常に変動の激しい市場であると言えます。トレーダー、資産運用会社、アドバイザー、市場オブザーバーなどは、それぞれの役割に応じて、ボラティリティを上手く利用して収益を上げる、またはボラティリティを抑えることを目指しています。

当社のホワイトペーパーでも言及したように、S&P 暗号通貨指数は高い年率リターンを示していますが、同時にリターンのボラティリティが非常に高いため、ダウンサイド・リスクも大きくなっています(図表1参照。図表は調査対象期間のリターンを示しており、バックテストされたデータに基づいています)。S&P ビットコイン指数を見ると、バックテストされた年率リターンの振れ幅が非常に大きくなっています。

S&P 500®と比較すると、2021年12月31日までの3年間において、S&P 500®の年率リターンは26%、リスク調整後年率リターンは1.5%、年率ボラティリティは17.4%でした。

暗号通貨ポートフォリオのボラティリティを抑えるための新たな指数ソリューションとして、当社はS&P 暗号通貨ダイナミック・リバランス・リスク・コントロール40%指数を開発しました。これらの指数は、コントロールされたボラティリティを測定し、指数リターンを平準化するように設計されています。当社では、ビットコイン及びイーサリアムを対象とするリスク・コントロール指数を算出しています(株式やコモディティなどの伝統的な資産クラスについても、S&P リスク・コントロール指数を算出しています)。図表2では、リスク・コントロール指数の仕組みを概念的に説明しています。

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スマートファクトリーの実現によって供給不足を解消

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Justin Holt

Senior Director, Research & Design, S&P Kensho Indices

S&P Dow Jones Indices

世界経済は新型コロナウイルスのパンデミックによる深刻な打撃から立ち直りつつあるものの、労働力不足やサプライチェーンの混乱により製造業の回復が遅れています。

幸いなことに、製造業の回復を後押しする技術が開発されています。製造業の現場では業務のデジタル化が進んでおり、非効率な工場が未来のスマートファクトリーへと変貌しています。第四次産業革命を牽引する原動力としては、計算能力の指数関数的な向上、ビッグデータ、人工知能(AI)、及び機械学習(ML)などが挙げられ、これらの高度なIT技術によってデジタル化の流れが加速しています。未来の工場では自動化や自己最適化がますます進み、高い持続可能性を実現できると見込まれています。

S&P Kenshoスマート・ファクトリー指数は、製造業に革命を起こしている企業のパフォーマンスに連動することを目指しています。この指数では、革新的な企業を広く網羅しており、特に以下の4つの技術を手掛ける企業に重点を置いています。

  • デジタル・マニュファクチャリング・ソリューション(指数ウェイトの52.6%1):デジタル・マニュファクチャリング・ソリューションとは、製造工程をデジタル化する取り組みです。デジタル化によって製造活動を接続・統合することにより、例えば環境に関するセンサー感知やモニタリング、高度なプロセス制御、及び予知保全などを行います。クラウドの導入が進む中で、リモート機能を有するデジタルトランスフォーメーションは「あると良いもの」から「ないと困るもの」に変わっています。
    • インテルの調査報告書2によると、製造業の現場では年間で最大800時間ものダウンタイム(業務が停止・中断している時間)があり、このうちの30%は計画外のダウンタイムとなっています。一方、熟練労働者の高齢化が進んでおり、約200万の職が後継者不足に陥るリスクがあります。
    • このソリューションを導入することで、コストと無駄を削減することが可能となります。マッキンゼーの調査3によると、産業機器の予知保全において人工知能(AI)を導入することにより、年間のメンテナンス・コストを10%削減し、ダウンタイムを最大20%削減し、検査コストを25%削減できる可能性があります。
  • 産業用モノのインターネット(IIoT)(指数ウェイトの22.9%):産業用モノのインターネット(IIoT)とは、ユビキタスなビッグデータ、センサー、機器、及びその他のデバイスをネットワーク化し、相互に制御する仕組みです。IIoTは、製造業者が産業活動を接続、自動化、追跡、及び分析する上で重要な役割を果たします。

IIoTでは、産業機器の状態をリアルタイムで監視することが可能であり、機器のオペレータや管理者はインターネットに接続されたデバイスを通じて、必要な情報をどこからでも把握することができます。

  • 産業用マシンビジョン(指数ウェイトの17.2%):産業用マシンビジョンとは、センサー、カメラ、コンピュータ、及び機械学習(ML)/人工知能(AI)を映像データと組み合わせることにより、製品の欠陥を検出し、機器のプロセスや製品の結果をモデル化及び予測することができる技術です。
  • デジタルツイン技術(指数ウェイトの7.3%):デジタルツイン技術とは、現実の世界にある有形の製品、機器の一部、または資産などの情報をもとに、「デジタル空間上の双子」を再現する技術です。例えば、デジタルツイン技術では、製造された製品、生産ライン全体、工場全体、または工場のネットワークなどをデジタル空間上に複製することが可能となります。

デジタルツインは非常に有用な技術です。ガートナー4の予想によると、企業はデジタルツインを活用することで、年間1兆ドルのメンテナンス・コストを削減できる可能性があります。

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オミクロン株の出現とアルファの関係性

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Craig Lazzara

Managing Director, Index Investment Strategy

S&P Dow Jones Indices

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の出現により、世界の金融市場は先週に波乱の展開となりました。この変異株が世界経済にどれだけの影響を及ぼすかについてはまだわかりませんが、この変異株が出現している中で、本稿ではコーポレート・ガバナンスに関する思考実験を紹介します。


この実験では、オミクロン株が非常に危険な変異株であり、厳しい経済封鎖が行われると想定します。さらに、ある医薬品メーカー「X 社」がオミクロン株に対して 100%の予防効果のある画期的なワクチンを開発したと想定します。X 社の株主は、X 社に対してどのようなワクチン価格の設定を望むでしょうか?言い換えると、X 社による有効なワクチンの開発は、株主にどれほどの金銭的な「アルファ」をもたらすのでしょうか?

その答えは X 社の株主構成によって決まります。X 社がほとんどの主要株価指数に採用されていると仮定すると、X 社の株式の大部分はインデックス・ファンドが保有していることになります。その場合、X 社の株主の多くは「ユニバーサル・オーナー」となり、X 社の株式だけではなく、X 社の競合他社、顧客、及びサプライヤーの株式も保有していることになります。インデックス運用の拡大については多くの議論があり、その全てが好ましい論調であるとは言えないものの、X 社が開発したワクチンのケースについては、ユニバーサル・オーナーへの影響(市場全体への影響)は良好なものになると考えられます。

その理由はなぜでしょうか?狭い視点からすると、X 社のワクチンに大きな価値があることは明確であるため、X社はこのワクチンの価格を高く設定すべきであると考えられます。しかし、ユニバーサル・オーナーの視点(市場全体の視点)からすると、X 社はワクチンを安価に提供すべきであるということになります(または、少なくとも限界費用で販売すべきである)。この場合、X 社は損をするかもしれませんが、より幅広い視点で見ると、多くの医薬品メーカーが有効なワクチンを豊富に供給することにより、市場全体が大きく上昇する可能性があると考えられます。したがって、インデックス・ファンドはポートフォリオに対するベータ効果により大きな収益を得ることになり、これは単一銘柄(X 社)から得られるアルファよりもずっと大きな収益となります。注目すべき 3 つのポイント:

  • この議論は利他的とは言えません。X 社がワクチンを安価に提供することは、「社会的責任」のある行動かもしれませんが、それはユニバーサル・オーナーがそのことを求める理由ではありません。ユニバーサル・オーナーが世界の株式市場を押し上げるために、X 社の収益性を無視すべきだという議論は、完全に利己的であると言えます。
  • 十分に分散されたポートフォリオを運用するアクティブ・マネージャーは、インデックス・ファンドと同じインセンティブを持っています。あるアクティブ・マネージャーは X 社をオーバーウェイトしているかもしれませんが、X 社のオーバーウェイトから得られる利益よりも、強気相場において得られる利益の方が大きいと考えられます。
  • X 社において重要な持ち分のバランスは、個人投資家と機関投資家の保有割合ではなく、アクティブ・マネージャーとインデックス・ファンドの保有割合でもありません。最も重要な違いは、ユニバーサル・オーナー(市場全体に分散投資している株主)と、分散投資していない株主の相対的な所有割合の違いです。もちろん、「分散投資していない」というのは幅広い相対的な用語ですが、「高い確信度」に基づいて集中投資を行うアクティブ・マネージャーやヘッジファンドなどがこれに含まれます。また、分散投資していない株主には、企業の経営陣も含まれると考えられます。

ユニバーサル・オーナーにとって、市場全体を上昇させる要因は有益となります。これは当然と言えば当然のことですが、このことはコーポレート・ガバナンスやスチュワードシップにとって重要な意味合いがあります。つまり、少なくとも一部の例では、リターンがアルファからではなく、ベータから得られるということを意味しています。

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