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時間的制約とボラティリティ管理

S&P 500 ESG指数のリバランスについて

インデックス運用の基礎として、透明性、独立性、及び信頼性の向上に取り組む

S&P PACT指数:2年間にわたりネット・ゼロへの取り組みに貢献

Kensho指数の相関

時間的制約とボラティリティ管理

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Craig Lazzara

Managing Director, Index Investment Strategy

S&P Dow Jones Indices

周知の通り、長期的に見ると米国株式市場は右肩上がりで上昇しており、1世紀近くにわたり年率10%以上の複利リターンを生み出しています。しかし、短期的に見ると株価が大幅に調整することもあり、例えばS&P 500®は2022年上半期に20%以上下落しました。株価が上昇と下落を繰り返すのは当たり前のことであり、なんら特別なことではありません。すぐに成果を求めない投資家は、相場の動きに一喜一憂する必要はなく、一時的な下落局面は押し目買いのチャンスとなります。

一方、すぐに成果を求める投資家もいます。投資家にはそれぞれ目標があり、目標には時間的制約があります。このような投資家は、長期的な株価上昇の恩恵を享受することはできますが、短期的な下落に対して過度に敏感になる場合もあります。

ディフェンシブ・ファクター指数はこうした問題を解決することができます一般的なファクター指数は、アクティブ戦略を指数化するように設計されています。つまり、通常であれば投資家はアクティブ戦略に対して運用報酬を支払う必要がありますが、ファクター指数はパッシブ運用の形でアクティブ戦略のようなリターンを提供することができます。図表1では、S&P 500に基づく複数のファクター指数の相対リスクと相対リターンを示しています。各ファクター指数のリスク/リターン特性に基づき、ファクター指数をリスク強化指数とリスク軽減指数に大別することができます。グラフの左側がリスク軽減指数、右側がリスク強化指数となります。

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S&P 500 ESG指数のリバランスについて

今年もまたリバランスの時期がやってきました。季節が移り変わり、春の陽気が漂う中で、S&P 500® ESG指数は4回目の年次リバランスを行いました。この指数は、幅広いセクターをカバーしつつ、サステナビリティ基準を満たす証券のパフォーマンスを測定するように設計されています。これまでのリバランスと同様に、今回のリバランスにおいても、こうした指数の特性を踏まえながら構成銘柄の入れ替えを行いました。

本ブログでは、今回のリバランスで行った変更について詳細に見ていきます。

結果

S&P 500 ESG指数のメソドロジーは、持続可能性を重視する投資家のセンチメントを反映するように設計されています。このことは、当社が最近行った「適格性要件に関する相談」の結果においても明確に示されています。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスはこの相談の結果を踏まえた上で、除外基準の見直しと拡大を行いました。その結果、小型兵器、軍需品供給契約、及びオイルサンドといった特定の事業活動に関与している企業を構成銘柄から除外することにしました。その他にも、事業内容や国連グローバル・コンパクト(UNGC)に基づく除外に関して、適格性チェックの頻度を増やすことを決定しました。このように様々な改善を行いましたが、S&P 500 ESG指数の主な目的は変化しておらず、全体としてS&P 500と同様のセクター・ウェイトを維持しながら、指数の全体的なサステナビリティ・プロファイルを改善することを目指しています。実際に、この指数はこれら2つの目的を達成できており、S&P 500と同様のリスク・リターン特性を維持する一方で、S&P 500を上回るS&P DJI ESGスコアを達成しています(図表1参照)。さらに、ここ1年間ではS&P 500をややアウトパフォームすることができています(図表2参照)。

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インデックス運用の基礎として、透明性、独立性、及び信頼性の向上に取り組む

今年、インデックス・インダストリー・アソシエーション(IIA)の会長に就任することになり、大変光栄に思います。IIAは2012年以降、世界中の独立系指数プロバイダーを積極的に支持する活動を行ってきました。インデックス運用の普及によって金融市場にアクセスする方法が大きく変化しており、誰でも金融市場に参加できるようになっています。IIAが設立されてから今年で10周年を迎える中で、我々はこうしたインデックス運用のメリットについて提唱していく役割を担っており、これまで以上に啓蒙活動を進めていく必要があると認識しています。

実際に、インデックス運用はここ30年間で急速に進化しています。インデックス運用は当初、世界の金融市場において比較的ニッチで曖昧なセグメントでしたが、今日では投資、退職後に向けた資金運用、及び世代を超えた資産形成を行う上で必要不可欠なツールになっています。

世界の指数プロバイダーは現在、合わせて約300万の指数を提供しており、広範な市場をはじめ、特定の市場セクターやセグメントの動きを追跡・測定することが可能となっています。こうした中で、インデックス運用業界では今後も競争が激化し、さらにイノベーションが進むと考えられます。

IAAでは「透明性」を基本原則としており、IAAのメンバーは指数メソドロジーを一般公開することに努めています。透明性の高い独立した指数により、豊富なデータや洞察が利用可能となっているため、市場のリスク、リターン、及び投資機会などをより正確に把握し、評価することが可能となっています。指数を活用することで、投資家は十分な情報に基づいた意思決定を行い、様々な運用目標を達成することができます。

指数自体は特に目新しいものではありません。米国の代表的な株価指数であるダウ・ジョーンズ工業株価平均®(DJIA)S&P 500®、及びその他多くのベンチマークは、市場の日々の動きを表すだけでなく、市場の歴史的な瞬間も反映します。例えば、指数は企業社会の変遷や、グローバル経済における産業の盛衰、新興企業の台頭などを表してきました。指数の動きを分析することで、市場の歴史と寿命に対する理解を深め、将来の見通しについて考察することができます。

指数とインデックス運用は、グローバル市場に多大な価値と恩恵をもたらしています。独立した指数プロバイダーは、資金の運用、資産の取引、または投資戦略の開発などを行いませんが、指数を第三者にライセンス供与しており、当社の指数は、指数に基づく金融商品(上場投資信託(ETF)など)の基礎として幅広く活用されています。指数は透明性と効率性を提供し、低コストでの運用を可能とするため、指数や指数に基づく金融商品(ETFなど)に対する需要は引き続き拡大しています。

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S&P PACT指数:2年間にわたりネット・ゼロへの取り組みに貢献

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Kieran Trevor

Analyst, ESG Research & Design

S&P Dow Jones Indices

急速に変化するESGの分野では、2年というのは長い年月であると言えます。100年に一度のパンデミックが世界を襲う中で、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P DJI)は様々なESG指数の開発を進め、気候指数の分野において市場リーダーとしての地位を確立しました。当社がS&P PACT™指数(S&P パリ協定準拠及び気候変動指数)の算出を開始してから、2022年4月20日で2周年を迎えました。この指数は、パリ協定で定められた1.5⁰C目標や、欧州連合(EU)の気候移行ベンチマーク(CTB)とパリ協定整合ベンチマーク(PAB)の最低基準、及び気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言などに即した指数となっています。S&P PACT指数は、S&P Global Trucostが提供する最新のカーボンリスク及び物理的リスクのデータを使用するとともに、指数のアプローチにおいて科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)を考慮することにより、EUのCTB及びPABの最低基準を十分に満たした指数となっています。

図表1は、この指数シリーズの算出が開始されて以降の経緯を示しています。当社は、新たな地域指数の算出を開始するとともに、指数構築に関して市場参加者と相談を行い、サステナブル投資環境の変化に対応してきました。

パフォーマンス指標

全てのS&P PACT指数は、気候関連の目標を達成する一方で、セクターと産業の構成比率をベンチマークと同等に維持し、アクティブ・リスクを最小限に抑えるように設計されています。図表2に示されているように、これらの目標は達成されており、各S&P PACT指数のリスクとリターンは、それぞれのベンチマークと概ね近い水準で推移しています。

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Kensho指数の相関

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Anu R. Ganti

U.S. Head of Index Investment Strategy

S&P Dow Jones Indices

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、多くのアクティブ運用マネージャーは2021年、市場をアウトパフォームすることができませんでした。これは、特に驚くことではありません。実際に、昨年における米国と世界の投資環境はアクティブ運用にそれほど適したものではありませんでした。

ばらつきと相関を見ることで、銘柄選択に適した投資環境であるかどうかを分析することができます。他の全ての条件が同じと仮定した場合、ばらつきが平均よりも大きければ、アクティブ運用マネージャーにとって有利な投資環境であると考えることができます。これは、ばらつきが大きければ、アクティブ運用マネージャーの銘柄選択スキルがより有効に機能するためです。相関の解釈の仕方はより複雑です。アクティブ運用マネージャーのポートフォリオは通常、指数のポートフォリオと比べて分散度合いが低く、かつボラティリティが高いと言えます。相関が高い場合には、相関が低い場合と比べて分散投資の効果が薄れます(より分散されたポートフォリオではボラティリティが低くなる)。

相関が平均より高ければ、アクティブ運用マネージャーにとって有利な投資環境であると考えることができます。これは、相関が高ければ、集中ポートフォリオの機会コストが低下するためです。当社では、集中投資のコストを、ポートフォリオのボラティリティに対する構成銘柄の平均ボラティリティの比率と定義しています。集中投資のコストが高いことは、機会コストであり、アクティブ運用マネージャーが克服すべきハードルが高いことを意味します。

S&P Kenshoニュー・エコノミー指数のユニバースは、S&P 500®のユニバースと比べてばらつきがより大きい一方、相関がより低くなる傾向があります。これは、当然であるとも言えます。実際に、Kensho指数の構成銘柄は、世界産業分類基準(GICS®)の枠組み内の銘柄と比べて、より特異な性質を持っています。

図表1では、2021年において、S&P Kenshoニュー・エコノミー・コンポジット指数のばらつきと相関が低下したことを示しています。

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