S&P 500 ESG指数は2019年1月28日に算出を開始し、これによりサステナブル投資は大きな節目を迎えました。S&P 500 ESG指数は、S&P 500の強み、流動性、及び影響力を活用する一方で、独自のESG基準を設定した指数です。これまで、ESG指数は単なる報告ツールと考えられていましたが、S&P 500 ESG指数が登場したことにより、ESG指数は投資戦略において不可欠な構成要素として認識されるようになりました。
S&P 500 ESG指数は幅広い業種の企業で構成されており、原指数であるS&P 500の300以上の構成銘柄を組み入れています。S&P 500 ESG指数はベンチマークと同等のパフォーマンスを提供するため に、S&P 500自体の属性の多くを反映することを目指しています。本稿では、S&P 500 ESG指数の特性を概説し、特に以下の点について詳細な考察を行います。
- この指数はシンプルかつ透明性の高いメソドロジーを採用している
- 過去のデータに基づくと、この指数のリスク調整後パフォーマンス特性はS&P 500と似通っている
- この指数は、S&P 500よりも優れたESG特性を有している
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P DJI)はS&P 500 ESG指数に加え、S&P 500 ESGリーダーズ指数やS&P 500 ESGエリート指数など幅広い指数を提供しており、これらはS&P 500 ESG指数よりもさらに厳格なESG基準を適用した指数となっています。S&P ESG指数のメソドロジーは、幅広い市場参加者がそれぞれの投資目標を達成できるよう、汎用性の高いものとなっています。
エコシステム
S&P 500 ESG指数が2019年1月に算出を開始して以降、この指数に連動する投資商品は大きな成長を遂げています(図表1を参照)。S&P 500 ESG指数は様々な金融商品(上場投資信託(ETF)、上場デリバティブ(ETD)、ミューチュアルファンド、保険商品、及びストラクチャード商品など)の基礎としての役割を果たしており、広範なエコシステムを形成しています。例えばETDには、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されるEミニS&P 500 ESG指数先物といった先物取引や、シカゴ・オプション取引所(CBOE)で取引されるS&P 500 ESG指数オプションといったオプション取引などがあります。S&P 500 ESG指数に連動する投資商品は活発に取引されているため、S&P 500 ESG指数は米国株式市場で最も流動性の高いサステナビリティ指数として認知されています。
ETFとETDのエコシステムは投資家に様々な優位性(流動性の向上、分散効果、リスク管理の選択肢、及び取引の柔軟性など)を提供しています。
- 流動性の向上:S&P 500 ESG指数に連動するETFとETDがあるため、投資家は原資産にアクセスする上で複数の手段を持つことができる。これらのETFとETDは活発に取引されており、市場の流動性向上に貢献している。
- 分散効果:S&P 500 ESG指数に連動する様々なETFが存在しているため、投資家はESGスコアを組み込んでいる証券のバスケットへのエクスポージャーを得ることができる。また、ETDを活用することにより、投資家はデリバティブ契約を通じて合成的にエクスポージャーを得ることも可能である。これにより、投資家はESGの視点で分散されたポートフォリオを構築することができる。
- リスク管理:ETDを使用し、効果的なリスク管理を行うことができる。例えば、市場変動に対するヘッジ、またはポートフォリオのリスク管理などが可能である。
- 取引の柔軟性:S&P 500 ESG指数に連動するETFとETDがあるため、投資家は柔軟な戦略を構築し、柔軟に取引を執行することができる。