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不動産投資:定量的なルール・ベースの指数を使用するグローバル分散投資

指数効果の低下

デジタル資産インフラ – カストディ

温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた取り組み

パッシブ運用による手数料の節約

不動産投資:定量的なルール・ベースの指数を使用するグローバル分散投資

質問…

米国株式、国際株式、長期国債、米国財務省短期証券、及び不動産投資信託(REIT)の5つの主要資産クラス中で、過去20年間において複利リターンが最も高かったのはどれでしょうか?株式でしょうか?利回りがゼロ近くまで低下したため、答えは債券でしょうか?

いいえ。REITが最も高いリターンを達成しました。過去20年間にわたる各資産クラスのリターンを比較すると、REITが最も高いリターンとなり、年間複利リターンは10.4%となりました。伝統的な投資ポートフォリオにREITを加えることにより、過去のリターンを上回る収益を獲得できる可能性があります。

さらに、株式や債券で構成されるポートフォリオに不動産(例えば、農地、アパートの賃貸、住宅建築業者、または商業用不動産など)を組み入れることで、ポートフォリオの分散を図ることができます。「REIT」について考える場合、多くの投資家は「インカム収入」を思い浮かべます。そして、どのREITの利回りが最も高いかに注目し、そこで分析をやめてしまいます。しかし、これは非常に視野の狭い手法であると言えます。

以下では、REITを組み入れたポートフォリオを構築する上で最適と考えられる方法について考察します。

グローバルな分散投資

分散投資を行う上で投資家が犯しやすい失敗の1つは、自国の資産に投資先を集中させてしまうことです。例えば、世界の株式市場を時価総額で見た場合、米国の株式市場は世界全体の合計時価総額の半分強に過ぎません。しかし、米国のほとんどの投資家は約80%以上の資金を米国株式に配分しています。

もちろん、このホームカントリー・バイアスは米国の投資家に限ったことではありません。世界中の投資家がホームカントリー・バイアスに陥っています。特に小さな国の市場は世界の合計時価総額に占める割合も小さいため、ホームカントリー・バイアスが大きな問題となり得ます。REITの場合でも、米国のREITだけを投資先として検討することは適切ではありません。しかし、バランスの取れた最適なREITポートフォリオを構築する上で、グローバルな分散投資を検討することは最初のステップに過ぎません。理論上は、その他にも重要なステップがあります。

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指数効果の低下

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Hamish Preston

Head of U.S. Equities

S&P Dow Jones Indices

  • この記事に含まれる指数 S&P 500

パッシブ投資が拡大している中で、株式のリターンは「指数効果」による影響を受ける可能性があるとの指摘が増えています。指数効果とは、指数構成銘柄の変更に伴ってインデックス・ファンドが銘柄を入れ替えた場合、その銘柄のリターンに影響が及ぶことを言います。この指摘が正しければ、指数に追加される銘柄には買い圧力が強まるため、当初はアウトパフォームします。一方、指数から除外される銘柄には売り圧力がかかるため、当初はアンダーパフォームします。

当社の最近のレポート(指数効果に何が起きたのか?:過去30年間にわたるS&P 500®の構成銘柄の追加と除外)では、S&P 500の構成銘柄の追加と除外について分析を行っています。S&P 500は世界で最も幅広く参照されている指数であり、2020年末時点で米国の大型株のベンチマークとして5兆4,000億ドル(1996年末時点では5,770億ドル)を超える資産がS&P 500に連動しています。したがって、指数効果が存在するのであれば、S&P 500の構成銘柄が追加または除外された場合にもその影響があると考えられます。

本レポートの結果は、既存の文献において共有されている一般的なコンセンサスを裏付けるものとなっています。それは、S&P 500の指数効果が構造的に低下しているように思われるということです。実際に、図表2に示されているように、S&P 500への追加銘柄と除外銘柄の超過リターン(追加・除外の発表日と有効日の間におけるS&P 500に対する超過リターン)の大きさは時間の経過とともに明らかに減衰しています。指数効果の低下は、追加された銘柄のソース、除外された銘柄の移動先、または企業のセクター分類とは無関係です。

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デジタル資産インフラ – カストディ

ビットコインについてお客様から問い合わせを受けたことはありますか?それは、ビットコインやその他の暗号通貨の購入方法に関する質問でしたか?あるいは、MetaMask ウォレット(暗号資産専用の Web ウォレット)の登録方法に関する質問でしたか?または、中央集権型取引所(例えば、コインベース)や分散型取引所(例えば、ユニスワップ)の選択に関する質問でしたか?暗号通貨を取引するには、専門用語を学ぶ必要があます。例えば、公開鍵(パブリックキー)と秘密鍵(プライベートキー)、ホットストレージとコールドストレージ、レッジャーとトレザー、及びシードフレーズなどは、暗号通貨取引において重要な専門用語です。さらに、暗号通貨を購入、取引、及び所有するための多くの方法が開発されており、イノベーションが加速しています。

暗号通貨市場は急速に成長しているため、規制環境の変化、未完成の技術、未知のリスク(ハッキングの恐れや、秘密鍵の紛失など)、及び運用や ITのセキュリティの必要性といった様々な課題があり、これらに対応するためにインフラ整備が進められています。暗号通貨市場は多様で複雑な市場であるため、市場の運営が困難となることもあります。

暗号通貨取引における課題の 1 つとして、暗号通貨のカストディ(管理・保管)の問題が挙げられます。金融機関にとって、目的に合ったカストディ・ソリューションを選ぶことは非常に重要であり、これは暗号通貨の分野における成功や競争力を左右する重要な要素となります。

一部の金融機関は、暗号通貨のカストディの問題(広い意味ではインフラの問題)をすべて回避することを選択しています。ビットコインやその他の暗号通貨を直接保有する場合、規制に抵触する可能性があるため、これらの金融機関は暗号通貨を直接保有せず、その代わりに上場投資信託(ETF)や先物を利用して暗号通貨へのエクスポージャーを得ることに目を向けています。

一方、暗号通貨を直接保有したい金融機関にとって、いくつかの選択肢があります。

独自のカストディ・ソリューションを構築する企業もあり、例えばスタンダード・チャータード銀行は、暗号資産カストディ・サービスを提供する「ゾディア」を立ち上げると発表しました。しかし、大手のカストディアン、銀行、及び資産オーナーなどの間では、デジタル資産専門のカストディ会社(ブロックチェーン・インフラに特化した会社)と統合するケースが増えています。これにより、従来型の企業であっても、複雑な業務を管理し、規制のグレーゾーンに対応し、迅速に市場にアクセスすることが可能になると考えられます。例えば、BNY メロンは、暗号資産のカストディ・サービスなどを手掛けるファイアブロックスを使用することを計画しています 1。その他の有名な暗号資産カストディ会社としては、アンカレッジ、ビットゴー(ギャラクシーが同社を買収することで合意)、及びキングダム・トラストなどが挙げられます。

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温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた取り組み

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Mona Naqvi

Global Head of ESG Capital Markets Strategy

S&P Global Sustainable1

はじめに

歴史的合意であるパリ協定が採択されたことを受け、人類の気候変動との戦いは大きな転機を迎えました。現在では、世界約190の国と地域が温室効果ガスの人為的な排出量を減らし、地球の平均気温上昇を抑えることに取り組んでいます。残念ながら、現時点で各国が掲げている公約や政策を実施するだけでは、地球温暖化問題を解決することは到底できません。2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを達成するためには、官民一体となった総合的な取り組みが必要となります。一方、新たなデータセットが蓄積され、革新的な指数ソリューションが開発されつつある中で、パリ協定の目標達成に向けて投資家が果たすことのできる役割が拡大しています。パリ協定に準拠した最先端のソリューション、物理的リスクに関するデータ、及びスコープ3排出量データとS&P PACTTM 指数(S&P パリ協定準拠気候変動指数)を活用することにより、市場参加者は地球環境に配慮したポートフォリオを構築することが可能となります。これにより、気候変動による壊滅的な影響を抑えると同時に、温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた取り組みに着手できると考えられます。

重要性を訴える宣言:気候変動リスクは現実のものだが、パリ協定準拠データが問題解決の糸口となる

人間の活動により、地球温暖化が急速に進行しています1。こうした状況の中で、迅速に対応策を講じなければ、人命の喪失、生態系の崩壊、及び広範囲にわたる環境破壊などが進み、人類は悲惨な結果に直面することになります。低炭素経済に移行し、地球の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃未満(できれば1.5℃未満)に抑える必要があり、そのために残された時間は長くありません。パリ協定が合意され、世界約190の国と地域がこの協定を批准している中で、地球温暖化防止への取り組みが加速しています。新たなデータセットが蓄積され、革新的な指数ソリューションが開発されつつある中で、投資家主導の革命が起こっています。これにより、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ目標の達成に向けて、資本の流れが変化しています。S&P PACT指数(パリ協定準拠気候変動指数)は、脱炭素化目標を達成するように設計された指数であり、欧州連合(EU)の低炭素ベンチマーク規制に準拠しています2。これらの指数は、パリ協定の遵守や、その他の気候変動に関する目標の達成を支援するように設計されており、広範かつ多様なエクスポージャーを維持することにより、ベンチマークのパフォーマンスに可能な限り連動することを目指しています。これらの指数は、S&P グローバルが提供する詳細かつ正確なデータを活用し、厳格なメソドロジーに従って算出されています。

寄稿者:

Mona Naqvi、ESG資本市場戦略のグローバル・ヘッド、S&P グローバル、mona.naqvi@spglobal.com

1科学雑誌に掲載された様々な記事で指摘されているように、気候科学者の97%以上は、人間の活動により地球温暖化が急速に進行していると考えています。https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/11/4/048002

2「欧州連合(EU)気候ベンチマーク及びベンチマークのESG開示」、欧州連合(EU)、https://ec.europa.eu/info/business-economy-euro/banking-and-finance/sustainable-finance/eu-climate-benchmarks-and-benchmarks-esg-disclosures_en

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パッシブ運用による手数料の節約

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Anu R. Ganti

U.S. Head of Index Investment Strategy

S&P Dow Jones Indices

2020 年末までの 20 年間において、米国の全ての大型株マネージャーの 94%が S&P 500®をアンダーパフォームしました。中型株及び小型株のマネージャーもほぼ同様の結果となりました。このように、アクティブ運用ファンドが低調なパフォーマンスにとどまっていることを受け、パッシブ投資が増加しています。このことは、近代金融史における最も大きなトレンドの 1 つであると言えます。

当社が最近実施した指数に連動している資産に関する年次調査によると、S&P 500 に連動する資産は急増しており、2020 年 12 月時点で 5 兆 4,000 億ドルに達しています。図表 1 にある通り、S&P 500 に連動する資産の増加額は市場の上昇による増加額を上回っており、これは資金流入が大幅に増加したことを示唆しています。

パッシブ市場の規模に関する見通しを提供するために、ここでは S&P 500 指数に連動する資産の浮動株調整後時価総額に占める割合を分析します。図表 2 は、この割合が 1996 年の 10%から 2020 年には 17%に劇的に拡大していることを示しています。インデックス運用が大幅に拡大しており、今後もさらに拡大する可能性が高いと見込まれます。

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