S&P 500®セクターによると、ここ数年においてセクター間のパフォーマンスのばらつきが拡大しています。実際に、2022年にはパフォーマンスが最高となったセクターと最低となったセクターの格差が過去最大となりました。こうした中で、セクター選択の影響を研究することが重要になっています(図表1参照)。世界の投資環境が急速に変化する中で、S&P 500セクターは依然としてアクティブ運用及びパッシブ運用のポートフォリオ構築におけるツールであるとともに、検討に値するものとなっています。
本稿の概要:
- セクターの特性、セクターのパフォーマンス、及びセクター要因が株式のリターンに及ぼす影響を検証する
- リターン分布の歪みが、銘柄、セクター、及び産業のアクティブな選択にどのような影響を及ぼすかを評価する
セクター指数を活用した戦略的及び戦術的なポートフォリオ運用に関するケーススタディを紹介する
1. はじめに
「自然を深く観察せよ。そうすれば、全てのものをもっと良く理解できるだろう」
アルバート・アインシュタイン
株式市場を、何世紀にもわたり生い茂る深い熱帯雨林のようなものとしてイメージしてみてください。そこでは、かつて存在し消えていった無数の投資手法が肥沃な土壌となり、そこから新たな投資手法が絶えず生まれ続けています。熱帯雨林は生命に満ち溢れ、新たな発見の機会を提供する探検の場となっていす。幾重にも重なり合う複雑なシステムは、意欲的な投資家を魅了し続けています。どのような要因が株価の動きを左右しているのでしょうか?そうした要因は市場全体を把握する上でどのように役立つのでしょうか?進化し続ける環境の中で、色鮮やかで新しい種(新しい投資手法)が冒険家の好奇心を惹きつけているように、熱帯森林の樹冠を突き抜けてひときわ高くそびえ立つ古い大木(セクター投資)もまた、冒険家の好奇心を惹きつけています。株式市場におけるセクターと同様に、この古い大木は長生きしているだけでなく、周囲の株式という生態系と密接な関係を持っており、絶えず進化する環境の中で生き残るためのヒントを与えてくれます。
本稿では、セクターや産業の永続的な有効性が市場を定義づけ、数多くの投資戦略の基礎として機能する仕組みについて検証します。積極的な銘柄選択を行うことが魅力的である一方で、銘柄選択を通じて指数をアウトパフォームすることが困難であるという証拠も存在しています。数十年にわたるデータによると、ポートフォリオのリスクを分散し、世界中の市場環境や経済環境に対する見方を表現する上で、セクター及び産業は、個別銘柄よりも効果的なエクスポージャーになる場合があります。
当社は、21世紀の市場サイクルの視点から、各セクターの過去のパフォーマンスを検証し、セクターを有益なものにしている一貫したパターンを見極め、グローバル・ポートフォリオにおける分散やパフォーマンスを改善するセクターの潜在的要因にハイライトを当てます。
セクターや産業は、ビジネスモデルやリスク・ファクターが同じような証券の集合体であり、これらの証券は、主に国境を超越する特性や、世界中の投資家に適した特性を備えている企業タイプと一致しています。様々なタイプの投資家が、幅広くかつ拡大している流動性の高い指数ベースの戦略や保有期間でセクターや産業を利用するケースが増えています。このことは、関連する上場投資信託(ETF)の資産水準の増加にも反映されています(図表2参照)。本稿では、セクター及び産業別指数の過去のパフォーマンスを検証するとともに、一貫したエクスポージャーを取り、意図せぬバイアスを是正するために1つまたは複数のセクターの戦略的な長期的利用に加え、市場または経済の状況に応じて配分を調整することを意図する戦術的な利用を検証します。その結果、現代の株式配分におけるビルディング・ブロックとしてのセクター及び産業の永続的な効力が再確認されました。