はじめに
1999 年には単一通貨ユーロが誕生し、映画『マトリックス』が公開され、世界 初のグローバル・サステナビリティ・ベンチマークであるダウ・ジョーンズ・サス テナビリティ・インデックス(DJSI)の算出が開始されました。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスと SAM(現在は RobecoSAM)が共同開発した DJSI は、サ ステナビリティ指数の分野を切り開いたパイオニア的存在であり、算出が開 始されて以降、企業のサステナビリティ実践の在り方を規定する指標となって います。DJSI は 2019 年に 20 周年を迎えました。これを記念して、本レポー トでは DJSI の原点や、市場への影響、サステナブル投資の将来展望などに ついて考察します。持続可能性に優れた企業の間では、DJSI に採用される ことが大きな名誉であるとされています。企業は毎年、世界的に有名な DJSI ワールドに採用されることを目指しており、これほど企業行動に影響を及ぼし ているベンチマークは他には存在しないと考えられます。現在、世界中で利 用可能なサステナビリティ指数は 37,000 以上あり2、その数は 2017 年及び 2018 年だけで 60%増加しており、この業界は急速に変貌しています 。環 境、社会、及びガバナンス(ESG)のベンチマーク・ツールは大幅に増加して いますが、DJSI は企業のサステナビリティ・パフォーマンスを測るベンチマー クの国際基準であり、この指数を初めて開発してから 20 年が経過した現在 においても依然として重要な基準となっています。
1700 年代から 1970 年代:責任投資の原点
「責任投資」という概念は、投資の歴史と同じくらい古くから存在しています。 責任投資の歴史は 18 世紀まで遡り、当時はクエーカーやメソジストといった 宗教グループが「罪深い」投資を避けることについて指針を提供していまし た。例えば、シャリーア法に準拠した投資は宗教理念に基づく戦略であり、こ うした戦略は今日に至るまで、広範なサステナブル投資の枠組みの範囲内 で提供されています。