世界的なエネルギー移行が進んでおり、こうした動きを支援する新たなテクノロジーに注目が集まっています。例えば、人々の日常生活では電気自動車を利用する機会が増えています。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス(以下、「S&P DJI」という)はS&P Global Commodity Insights(以下、「SPGCI」という)と協力して、S&P GSCI 電気自動車メタル指数の算出を開始しました。この指数は、電気自動車の生産に使用されるコモディティのパフォーマンスに連動することを目指します。
1. この指数を開発するきっかけとなった要因は?
お客様の間では、エネルギー移行へのエクスポージャーを提供する投資可能なテーマ別戦略に対する需要が高まっており、こうした需要に応えてこの指数が開発されました。エネルギー移行への取り組みは、金融市場の参加者にとって大きな課題となっていますが、その一方で大きな投資機会も提供されています。コモディティ市場ほど2つの構造が明らかに存在する市場は他にありません。
歴史的に見ると、テクノロジーの発展は、コモディティ価格の下落要因として作用してきたと考えられます。技術革新によって代替品の利用が可能となり、生産性が向上したため、それほど多くの原材料を使用しなくても需要を満たすことができるようになりました。しかし、脱炭素化への取り組みでは、これとは全く逆のことが起ります。グリーン・テクノロジーの採用が進むに従い、より多くのコモディティ(特に金属)が必要になると見込まれます。内燃機関自動車(ICEV)から電気自動車(EV)への移行は、脱炭素化における最も顕著でかつ急速な動きの1つであると言えます。S&P GSCI 電気自動車メタル指数は、電気自動車に使用される金属部品のパフォーマンスを測定するように設計されています。
2. 今、この指数の算出を開始した理由は?
足元ではEVが主流になりつつあり、EVはもはや幼稚産業ではありません。
市場参加者は、EV市場のパフォーマンスに連動し、EV投資を評価し、EV投資戦略を策定する方法を模索しています。この指数は、EVの生産に使用される金属部品を生産量加重ベースで複製する革新的な指数となっています。SPGCIの予想によると、プラグインEVの普及を受け、2040年までにガソリン及びディーゼル燃料の消費量が世界全体で1日当たり500万バレル以上も減少する可能性があります1。その一方で、EVの生産に使用される金属の需要は増加すると予想され、特に銅やリチウムの需要は600%近く増加すると見込まれます。
EVの生産拡大に伴って、EV向けバッテリーに使用される金属(コバルトやリチウムなど)を取引する新たな商品先物市場の創設が進んでいます。流動性の高い先物市場は、コモディティ市場における価格発見機能の向上を促し、公正な価格形成に寄与します。また、流動性の高い先物市場が創設されれば、EVに使用される全ての主要金属部品の動きを反映する指数を構築することも可能となります。
3. この指数はどのように構築されるか?
S&P GSCI 電気自動車メタル指数は、商品先物に基づく指数であり、EVの生産に使用される金属のパフォーマンスを反映するように設計されています。SPGCIの専門知識を活用し、指数の構成銘柄や生産量加重ウェイトを決定しており、この指数は代表的なEVにおける相対的な金属使用量を概ね反映しています。この指数では、構成銘柄のウェイト調整、追加、または除外を定期的に行っているため、EVテクノロジーの変化や、新たな金属先物取引の開始及び導入に対して柔軟に対応することが可能です。
この指数の構成銘柄は、平均的なEVにおける金属使用量に、その金属の1単位当たりの平均価格を乗じた値に基づいてウェイトが設定されます。このウェイトはEVにおける金属部品の相対的コスト(または価値)を示します。SPGCIが定義するバッテリーの金属の構成要素(コバルトやリチウムなど)のウェイトには、契約取引量要件や流動性要件に基づいて上限が設定されるため、この指数は複製可能かつ投資可能な指数となります。
4. この指数を使用することにより、最も恩恵を受ける対象者は?
この指数は、金融市場全体にわたり様々な役割を果たすことが可能であると考えられます。この指数は、EVの生産に不可欠な主要金属の価格パフォーマンスに連動するベンチマークとして設計されました。また、上場取引型金融商品などの金融商品の基礎として使用することも可能です。この指数は、すでにコモディティ市場で活発に取引を行っている市場参加者にとって魅力的な商品になる可能性があります。また、伝統的にコモディティ市場にエクスポージャーを保有していないものの、エネルギー移行に関連する戦略に興味のある投資家にとっても魅力的な商品になる可能性があります。
5. この指数におけるSPGCIの役割は?
SPGCIは、エネルギー移行、バッテリー用金属、及びEVなどの分野における専門知識を有しており、コモディティ市場の評価においても豊富な経験を備えているため、適切な情報に基づいてこの指数を構築することができます。SPGCIは、典型的なEVにおける金属使用量を年2回公表する予定です。この使用量データに基づき、各指数構成銘柄のウェイトを決定します。SPGCIは、EVの金属部品と、これらの部品の生産量ウェイト(キログラム単位)を公表します。この公表の前に、SPGCIは市場参加者や業界団体に対するエンゲージメント活動を行い、リサーチ・レポートやその他の関連リソースを参照することもあります。
代表的なEVにおける金属使用量に関するSPGCIの年2回のアップデートでは、新たなコモディティを含める場合があります。EVテクノロジーが変化する中で、この指数では新たな構成銘柄を指数に追加し、そうした変化を的確に反映させることに努めています。SPGCIは、EVに使用される主要部品を監視しており、バッテリーの化学的要素の変化や進化などについても注意深く見守っているため、当初の構成銘柄に新たな銘柄が追加される場合があります。
6. この指数の構成から判断して、この指数の主なメリットは?
S&P GSCI 電気自動車メタル指数では、構成銘柄のウェイト調整、追加、または除外を定期的に行っているため、EVテクノロジーの変化や、新たな金属先物取引の開始及び導入に対して柔軟に対応することが可能です。
この指数のもう1つの重要な特性は、この指数が株式ではなく、商品先物に基づいていることです。テーマ別指数に株式市場のベータが存在する場合、これらの指数が実体経済における特定のテーマまたは構成要素のパフォーマンスを真に反映することが困難になることがあります。どの企業がEV市場の主導権を握るかを予想することは困難であるものの、EV車の製造に必要な金属の需給動向や価格パフォーマンスを測定することは比較的容易であると言えます。
7. S&P DJIとSPGCIのコラボレーションにおいてユニークな点は?
S&P DJIは、ベンチマークや投資可能な指数を提供する世界有数の指数プロバイダーです。当社の指数は、市場パフォーマンスに連動し、ポートフォリオのパフォーマンスを評価し、投資戦略を開発するために広く利用されています。S&P GSCI指数をはじめとする当社のコモディティ指数シリーズは、コモディティ・ベータ、コモディティ・セクター、単一コモディティ、及びコモディティ・テーマなどに関する明確な尺度を市場参加者に提供します。
SPGCIは、コモディティ市場で主導的役割を果たしています。SPGCIは毎日、ニュース、コメント、ファンダメンタルな市場データ、リサーチ、及び分析などを提供するとともに、現物市場や先物市場でベンチマークとして広く使用されている数千もの価格評価を公表しています。
S&P GSCI 電気自動車メタル指数は、SPGCIのデータを組み込んだ初めてのS&P DJIの指数です。金属コモディティは重要な投資セグメントであり、この分野においてS&P グローバルの2つの独立した部門の専門知識を結集できることは非常に画期的なことであると言えます。我々は市場の透明性を改善することに努めており、エネルギー移行に関連する成長分野において、ユニークな投資戦略を策定する能力を市場参加者に提供することを目指しています。