サマリー
- 世界は、気候変動のリスク及び影響を減らすために温室効果ガス排出量を削減する必要性に迫られています。投資家を含む利害関係者の責任ある行動が求められています。
- S&P DJIは、S&P グローバルの一部門であるTrucostが作成する詳細な気候データセットを活用し、革新的な気候指数を開発しています。
- S&P DJIの気候変動指数は、不適切な投資対象の除外(ダイベストメント)、脱炭素化、及びリスク回避から、科学的根拠に基づく5°Cシナリオへの合致に至るまで、投資家の幅広い目的に対応しています。
気候変動指数を開発した理由は?
科学的事実
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「人間の活動により、世界の平均気温は産業革命前の水準と比べて約1.0°C上昇したと推定される」と表明しました1。世界の現在の気候政策はベースライン排出量を削減することを目指していますが、それでも世界の平均気温は2100年までに3.0°C上昇すると予測されています2。IPCCは、世界の気温上昇を産業革命前の水準から1.5°C未満に抑えることを勧告しています。
地球温暖化に伴う環境や生態系への影響がすでに観測されています。エコシステムの崩壊が進んでおり、一部の影響は長期にわたり継続すると予想され、元の状態に戻らない可能性もあります。
規制
人間の行動が地球温暖化を招いているということは科学的コンセンサスであり、こうした中で政府や規制当局は措置を講じています。2015年12月にはパリ協定が採択され、人類は気候変動対策における大きな一歩を踏み出しました。パリ協定では、IPCCが提言したように、地球の温暖化を産業革命前の水準と比較して2°Cより十分低く保つとともに、1.5°Cに抑える努力を追求することが掲げられ、危険な気候変動を避けるための国際的枠組みが合意されました3。国連気候変動枠組条約の1974の締結国の内、189ヵ国がパリ協定を批准しており、これらの批准国はそれぞれ、「国が決定する貢献(世界の温室効果ガス排出量削減目標に対する個別国の貢献)」を公約しています。
欧州連合(EU)はEU全体で温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で40%削減することを公約しています。パリ協定の下でEUの公約を支援するため、EUは「欧州グリーンディール5」を採択しました。欧州グリーンディールとは、持続可能な金融のワークストリームやサステナブル・ファイナンス行動計画6(気候中立な経済への移行に向けて民間投資を促すための意欲的なプロジェクト)などを柱とする気候変動対策です。EUの権限は広範囲に及んでおり、自主的な気候ベンチマーク・ラベルに関する規制は、パッシブ投資家にとって特に重要なものとなります。これについては、後述の「(EU)パリ協定準拠ベンチマーク及び気候変動指数」のセクションを参照ください。