私は先日、パッシブ運用をテーマとするオンラインセミナーに参加する機会がありました。視聴者の中のポートフォリオ・マネージャーは次のような興味深い質問をしました。「X%のリターンを獲得することが目標であれば、指数のパフォーマンスは関係ないのではないですか?言い換えれば、特定の絶対リターンを獲得したいのであれば、指数に対する相対リターンを気にする必要はないのではないですか?」
これは良い質問であり、多くの良い質問に対する答えと同様に、この質問に対する答えも場合によって異なります。つまり、付随する質問によって答えが違ってきます。X%のリターンを獲得することが投資家の目標であれば、どのような手段でその目標を追求しようとするかがポイントとなります。
投資の世界には多くの資産クラスがあります。金の延べ棒やビットコイン、または優れた芸術家の絵画などを購入する投資家もいます。しかし、ほとんどの場合、投資家や運用受託会社は証券に投資することにより絶対リターンを追求します。証券市場では、少なくとも2つの理由で指数のリターンが重要となります。
1つ目として、適切に構築されたベンチマークでは、投資家の機会集合を定義します。S&P 500®のような時価総額加重指数は、株式市場の価値に連動するように設計されています。株式市場全体の価値が変化すれば、指数のリターンにも直接的な影響が及びます。
年間8%のリターンを獲得することが投資家の目標であると仮定し、投資している市場が20%下落した場合、投資家がその目標を達成することはほぼ不可能です。一方、市場指数が20%上昇した場合、8%のリターンで投資家が満足することはほぼあり得ません。絶対リターンは願望であり、相対リターンは実用的なものであると言えます。
2つ目として、市場指数に対するポートフォリオの相対リターンは、運用マネージャーのスキルを表します。お客様は、パッシブ運用によって市場平均並みのパフォーマンスを確保するか、またはアクティブ運用によって市場平均をアウトパフォームすることを目指すかを選択することができます。アクティブ運用マネージャーにとっての成功の尺度が、ベンチマークをアウトパフォームすることであれば、過去の実績を見る限り、ほとんどの期間において、大抵のアクティブ運用マネージャーはベンチマークをアウトパフォームできていません。実際に、長期の投資期間では、指数運用の優位性が非常に大きくなっています。
したがって、パッシブ運用によって市場平均並みのパフォーマンスを目指す投資家は、市場平均をアウトパフォームすることを目指す投資家よりも良い成果を得る場合が多いと言えます。相対リターンを諦め、ベンチマークに対する超過収益を目指さないことが、絶対パフォーマンスを向上させる重要なカギとなるかもしれません。