S&P Kenshoニュー・エコノミー指数は、第四次産業革命 を牽引する産業とイノベーションの動きを捉える
2023年第2四半期初めには、マクロ経済リスクの高まりを受け、株式市場は不安定に推移しましたが、四半期全体では堅調なパフォーマンスとなりました。米国の債務上限引き上げ交渉が難航したことで、市場は神経質な展開となったものの、債務上限問題は予想通り解決し、米国債利回りや世界の株式市場に大きな影響が及ぶことはありませんでした。それ以外では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ方針やマクロ経済指標に注目が集まる一方で、今後数四半期における景気後退の可能性が懸念されました。FRBは6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げの一時停止を決定しました。その後、パウエルFRB議長は2023年末時点の経済成長見通しとインフレ見通しを上方修正し、タカ派姿勢を再表明しました。これを受け、市場では年末時点の予想金利水準が上昇したものの、FRBによる年末時点の予想金利水準を下回りました。市場とFRBの見方にはそれぞれ根拠があります。米国債のイールドカーブの逆転、シリコンバレー銀行の破綻による銀行融資基準の厳格化、インフレ率の鈍化、及び企業業績の減速見通しなどを踏まえると、FRBは利上げを早期に打ち止めする可能性があります。その一方で、堅調な個人消費、労働市場の逼迫と賃金の上昇、エネルギー価格の下落、及びコア・インフレ率の高止まりなどを踏まえると、FRBは計画通り利上げを継続する可能性があります。投資家は、今後数ヵ月にわたり発表される経済指標を確認し、FRBの政策方針がより明確になるまで静観すると見込まれ、こうした中で投資家は潤沢な手元資金を確保しているように思われます。ファンドの資金フロー・データによると、シリコンバレー銀行の破綻を受け、第1四半期には4,240億ドルもの資金がマネー・マーケット・ファンドに流入しましたが、第2四半期も1,740億ドルの流入があり、マネー・マーケット・ファンドへの旺盛な資金流入が続きました(リンク)。
世界の株式市場(S&P グローバル総合指数)は6%上昇し、米国を除く先進国市場(2.2%)と新興国市場(1.3%)がともにパフォーマンスに貢献しました。原油価格の安定やインフレ率の鈍化を受け、第2四半期にはユーロ圏の株式市場も上昇しましたが、米国の株式市場をアンダーパフォームしました。中国ではゼロコロナ政策が解除されて以降、需要見通しの下方修正が続いており、こうした中で新興国市場の株価は伸び悩みました。米国の株式市場(S&P 1500™)は8.4%上昇し、大型株、中型株、及び小型株の全てのセグメントがプラスのパフォーマンスとなりました。S&P 500®も第2四半期に8.7%上昇しました。同指数は2022年10月の底値から24%上昇し、テクニカル面で強気相場に戻りました。ただし、株価の上昇を牽引したのは、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7銘柄(アップル、アマゾン、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、及びテスラ)であり、これらの銘柄だけでS&P 500は第2四半期に5.6%近く押し上げられました。また、情報技術セクターはS&P 500の上昇の半分以上に寄与しました。グロース株への資金流入が続き、グロース株がバリュー株をアウトパフォームする傾向が続きました(グロース指数は第2四半期にバリュー指数を4%アウトパフォーム)。低ボラティリティ戦略や配当戦略は若干のマイナス・パフォーマンスとなりました。VIX®指数は、コロナ禍が始まって以降で最も低い水準に達しました。S&P Kenshoニュー・エコノミー・コンポジット指数は4.6%上昇し、2四半期連続の上昇となりました。グロース株やテクノロジー株が堅調であったことは、各サブセクターのパフォーマンスにも反映されました。25のサブセクターの内、16がプラスのパフォーマンスとなりました。一方、サステナブル・ファーミング、デジタル・ヘルス、及びクリーン・エネルギーなどのディフェンシブ性の高いサブセクターは軟調なパフォーマンスとなりました。
主要中央銀行がタカ派姿勢を維持する中で、債券市場は第2四半期に総じて下落しました。米国債利回りが上昇したため、米国債指数は第2四半期にマイナスのリターンとなり、特に長期国債指数の下落が目立ちました(S&P 米国債7-10年指数は-1.5%)。iBoxx米ドル建てリキッド・ハイイールド指数(1.3%)はiBoxx米ドル建てリキッド投資適格指数(-0.04%)をアウトパフォームしました。コモディティ(-2.7%)は第2四半期に下落し、特に産業用金属(-9%)とエネルギー(-3.2%)の下落が目立ちました。世界経済の減速懸念などを受け、原油(-7%)は下落しました。一方、天然ガス(26%)は上昇しましたが、年初来では依然として大幅な下落となっています。米議会で連邦債務上限の引き上げが合意されたことから、金(-3%)はやや下落し、第1四半期の上昇分を一部失いました。米ドルは第2四半期に比較的安定して推移しました。