コンテンツリスト

温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた取り組み

パッシブ運用による手数料の節約

最新のS&P 暗号通貨指数の算出開始により、デジタル市場のツールキットが拡大

新たな投資の時代に対する戦術的アプローチの採用

アップデート:テスラがS&P 500 ESG指数に採用された理由

温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた取り組み

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Mona Naqvi

Global Head of ESG Capital Markets Strategy

S&P Global Sustainable1

はじめに

歴史的合意であるパリ協定が採択されたことを受け、人類の気候変動との戦いは大きな転機を迎えました。現在では、世界約190の国と地域が温室効果ガスの人為的な排出量を減らし、地球の平均気温上昇を抑えることに取り組んでいます。残念ながら、現時点で各国が掲げている公約や政策を実施するだけでは、地球温暖化問題を解決することは到底できません。2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを達成するためには、官民一体となった総合的な取り組みが必要となります。一方、新たなデータセットが蓄積され、革新的な指数ソリューションが開発されつつある中で、パリ協定の目標達成に向けて投資家が果たすことのできる役割が拡大しています。パリ協定に準拠した最先端のソリューション、物理的リスクに関するデータ、及びスコープ3排出量データとS&P PACTTM 指数(S&P パリ協定準拠気候変動指数)を活用することにより、市場参加者は地球環境に配慮したポートフォリオを構築することが可能となります。これにより、気候変動による壊滅的な影響を抑えると同時に、温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた取り組みに着手できると考えられます。

重要性を訴える宣言:気候変動リスクは現実のものだが、パリ協定準拠データが問題解決の糸口となる

人間の活動により、地球温暖化が急速に進行しています1。こうした状況の中で、迅速に対応策を講じなければ、人命の喪失、生態系の崩壊、及び広範囲にわたる環境破壊などが進み、人類は悲惨な結果に直面することになります。低炭素経済に移行し、地球の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃未満(できれば1.5℃未満)に抑える必要があり、そのために残された時間は長くありません。パリ協定が合意され、世界約190の国と地域がこの協定を批准している中で、地球温暖化防止への取り組みが加速しています。新たなデータセットが蓄積され、革新的な指数ソリューションが開発されつつある中で、投資家主導の革命が起こっています。これにより、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ目標の達成に向けて、資本の流れが変化しています。S&P PACT指数(パリ協定準拠気候変動指数)は、脱炭素化目標を達成するように設計された指数であり、欧州連合(EU)の低炭素ベンチマーク規制に準拠しています2。これらの指数は、パリ協定の遵守や、その他の気候変動に関する目標の達成を支援するように設計されており、広範かつ多様なエクスポージャーを維持することにより、ベンチマークのパフォーマンスに可能な限り連動することを目指しています。これらの指数は、S&P グローバルが提供する詳細かつ正確なデータを活用し、厳格なメソドロジーに従って算出されています。

寄稿者:

Mona Naqvi、ESG資本市場戦略のグローバル・ヘッド、S&P グローバル、mona.naqvi@spglobal.com

1科学雑誌に掲載された様々な記事で指摘されているように、気候科学者の97%以上は、人間の活動により地球温暖化が急速に進行していると考えています。https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/11/4/048002

2「欧州連合(EU)気候ベンチマーク及びベンチマークのESG開示」、欧州連合(EU)、https://ec.europa.eu/info/business-economy-euro/banking-and-finance/sustainable-finance/eu-climate-benchmarks-and-benchmarks-esg-disclosures_en

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パッシブ運用による手数料の節約

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Anu R. Ganti

Head of U.S. Index Investment Strategy

S&P Dow Jones Indices

2020 年末までの 20 年間において、米国の全ての大型株マネージャーの 94%が S&P 500®をアンダーパフォームしました。中型株及び小型株のマネージャーもほぼ同様の結果となりました。このように、アクティブ運用ファンドが低調なパフォーマンスにとどまっていることを受け、パッシブ投資が増加しています。このことは、近代金融史における最も大きなトレンドの 1 つであると言えます。

当社が最近実施した指数に連動している資産に関する年次調査によると、S&P 500 に連動する資産は急増しており、2020 年 12 月時点で 5 兆 4,000 億ドルに達しています。図表 1 にある通り、S&P 500 に連動する資産の増加額は市場の上昇による増加額を上回っており、これは資金流入が大幅に増加したことを示唆しています。

パッシブ市場の規模に関する見通しを提供するために、ここでは S&P 500 指数に連動する資産の浮動株調整後時価総額に占める割合を分析します。図表 2 は、この割合が 1996 年の 10%から 2020 年には 17%に劇的に拡大していることを示しています。インデックス運用が大幅に拡大しており、今後もさらに拡大する可能性が高いと見込まれます。

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最新のS&P 暗号通貨指数の算出開始により、デジタル市場のツールキットが拡大

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスは、S&P 暗号通貨総合デジタル市場(BDM)指数を始めとする最新の暗号通貨指数の算出を開始することを発表します。以前にも述べたように、暗号通貨の普及に伴って新たな機会や課題が生じています。暗号通貨は新たな資産クラスになりつつありますが、透明性の欠如が大きな問題となっています。

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスは、S&P 暗号通貨総合デジタル市場(BDM)指数を始めとする最新の暗号通貨指数の算出を開始することを発表します。以前にも述べたように、暗号通貨の普及に伴って新たな機会や課題が生じています。暗号通貨は新たな資産クラスになりつつありますが、透明性の欠如が大きな問題となっています。

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新たな投資の時代に対する戦術的アプローチの採用

わりがなく、目まぐるしく変化 する経済情勢や市場環境を背景 に、この地域の主要な資産保有 者は、長期的な元本の成長と、ポートフォ リオの分散に重点を置く姿勢を強めてい ます。

この つの目標を今年達成するため、 投資家の間ではアジアの上場証券および 北米のプライベート市場に注目が集まっ ているように思われます。同時に、投資 対象資産や投資プロセスの両面で、テク ノロジーや ESG(環境・社会・ガバナンス) 要因の影響がこれまで以上に大きくなっ ています。

これらはすべて、アジア太平洋地域の ソブリン・ウェルス・ファンド、政府機関、 保険会社、公的・民間の年金基金、寄付 基金、プライベート・バンク、およびその 他の資産保有者などの投資責任者 105 人 の見解に基づいています。

これらの洞察は、AsianInvestor 誌が S&P DJI と共同で 2021 年 月から 月 にかけて実施した調査の一環として得ら れたものです。この調査では、香港、台湾、 オーストラリア、韓国、日本、シンガポール、 タイ、マレーシア、インドネシア、フィリ ピン、およびインドを対象としています。

S&P DJI では、世界のその他の地域に 比べて回復が比較的堅調で早いことがア ジアの原動力になると考えており、以上 のコンセンサスはアジアに対する見方と 一致しています。

S&P DJI の戦略指数部門のシニア・ディ レクターである Tianyin Cheng は次のよ うに述べています。「これは、政府の景気 刺激策、緩和的な金融政策、および大規 模な投資によって支えられています。こう した回復は、国債市場、株式市場、およ び様々な資産クラスのバリュエーション に重要な影響をもたらしています。」

持続可能性を考慮する

このような状況の中で、資産配分を決 定する際に、多くの投資家は低炭素社会 への移行を意識したポジショニングを引 き続き重視しています。

これは、多くの回答者にとって、2021 年に地域分散を図ることやセクターに焦 点を当てることよりも、戦術的エクスポー ジャーをテーマとすることが重要である ことを反映しています。また、テーマに 投資する際に、回答者はリスク調整後のリターンが今年最も高くなるのは ESG (26%)であると考えており、変革をもた らすテクノロジー(21%)およびヘルス ケア・バイオテクオロジー(20%)が僅 差でこれに続いています。

パンデミック収束後の環境においてリ ターンを向上させる上で、回答者は持続 可能性へのコミットメントと同様に、追加 データや分析ツールを通じて ESG 要因を 組み込むプロセスが望ましいと考えてい ます。

Cheng は次のように述べています。「こ こ数年にわたり、気候変動に注目が集まっ ていますが、今は転換期を迎えています。 低炭素社会への移行を支援する投資資金 について、議論するだけではなく、実際 に行動に移すべき時期が来ています。」

同時に、人工知能やビッグデータ・ソ リューションなどのテクノロジーや優れ たシステムを導入することも、投資家に とって優先順位が高く、外部のアクティ ブ・マネージャーのパフォーマンスをより  詳細に精査する取り組みも同様です。こ れらのアプローチは、許容されるクレジッ ト水準を引き下げてより多くのリスクをと るか、あるいは投資スタッフを増員すると いった従来のアプローチよりも、はるかに 高い効果を発揮すると期待されています。

注目されるエクスポージャー

投資テーマ別の見方を実行するため、 また足元の厳しい投資環境に戦術的に対 応するため、2021 年にエクスポージャー を増やすことを計画している資産クラス としては、上場株式が回答者の圧倒的な 支持を獲得し、上場債券が第 2 位となり ました。

しかし、非上場市場は依然として利回り を求める一部の投資家の関心が高く、回 答者は、特にプライベート・エクイティに 加えて、プライベート・デットや不動産へ のエクスポージャーを増やすことを選択 しています。

Cheng は次のように付け加えました。「上 場債券に代わる資産として、実物資産や オルタナティブ資産への配分が増加する 傾向が見られます。また、その他の選択 肢もあります。流動性の高いオルタナティ ブ投資は投資額の増減が可能であり、伝 統的な資産クラスとの相関が低くなる傾 向があります。これらは非常にシステマ ティックであるため、投資家がオルタナ ティブ戦略にアクセスする上で低コスト かつ効果的な方法を可能にする指数化に も適しています。」

こうしたエクスポージャーを得るため に、回答者が最も選好するアプローチは 自社運用(36%)であり、分離勘 (23%)、 ETF または指数連動型ソリューション (19%)がこれに続いています。

パッシブ運用への関心が薄れているこ ともあり、回答者によると、今後 6 ヵ月 から 12 ヵ月の間にパッシブ戦略がやや増 える可能性が高いように思われます。パッ シブ戦略を増やす可能性が「高い」と答 えた回答者は 13%、「中程度」と答えた回 答者は 45% となりました。

Cheng は次のように述べています。「ア ジアでは、アクティブ投資に比較的こだわ る傾向が広く見られます。一方、欧米では、 パッシブ商品にかなりの資金流入が見ら れます。このことは、アジアではほとんど のタイプの機関投資家においてパッシブ 投資に関する理解がまだ不足しているこ とを示しています。」

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アップデート:テスラがS&P 500 ESG指数に採用された理由

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Daniel Perrone

Director & Agile Transformation Lead

S&P Dow Jones Indices

前回のブログでも言及したように、テスラは 2020 年 12 月 21 日に S&P 500 に採用されましたが、その後すぐに S&P 500® ESG 指数に採用されたわけではなく、次の年次リバランスまで待つ必要がありました。このリバランス がようやく実施され、2021 年 5 月 1 日時点で、テスラは正式に S&P 500 ESG 指数の構成銘柄になりました。本稿 では、S&P 500 ESG 指数へのテスラの採用に関するこれまでの経緯や、その意味するところについて説明しま す。

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