ESG要因への投資比率は依然として低い
新型コロナウイルスによってマクロ経済や資産 格に悪影響が及んでいる中で、 投資リ ターンの観点からESGの価値が高まったこと は、 この時期において明らかになった数少な い好材料の1つと思われます。 2020年第1 四半期には、 パンデミックによって市場のボラ ティリティが上昇する中で、 ESGファンドに対する 投資家の関心が高まったため、 ESGファンド は底堅いパフォーマンスとなりました。 つまり、 ESGに真剣に取り組んでいる多くの企業や 投資ファンドは、 ピアグループをアウトパフォームす ることができたと言えます。 例えば、 S&P グロー バル ・ マーケット ・ インテリジェンスが行ったリサー チはこのことを明確に示しています。 このリサーチ は、運用資産残高(AUM)が2億5,000 万ドル以上で、 なおかつESG基準に基づい て銘柄選択を行っている17の上場投資信 託(ETF)とミューチュアル ・ ファンドを対象に行 われました。
その結果、 このうちの12のETFとミューチュアル ・ ファンドが年初来でS&P500をアウトパフォーム していました。 また、モーニングスターによると、 世界 のサステナブル ・ ファンドのユニバースは2020 年第1四半期に456億ドル拡大しました。 一方、 投資ファンド ・ ユニバース全体では同 時期において3,847億ドルの資金流出が ありました。 しかし、調査結果によると、 アジアを 本拠地とする多くのアセット ・ オーナーは今のと ころ、ESG要因への投資比率が低水準に とどまっています。具体的には、回答者の3分 の2以上(68%)は、 ESG関連のマンデートへ の投資比率がポートフォリオの10%未満であ ると述べました。 また、 この比率が20%以上で あると回答した投資家は、全体の5分の1に 留まりました。 調査の回答者によると、 ESGへ のエクスポージャーを加える、または増やす際の 最大の懸念事項は、 「質の高いデータまた は標準化されたデータが不足」 していることで す。 また、 「ESGの価値に対する社内の理 解が不足」 していると述べた回答者も多くい ました。 その他には、 「分析やデューデリジェンス に追加コストがかかる」 といった回答も見られ ました。
ESG投資を行う理由
一方、 より積極的にESG投資に取り組んで いるアセット ・ オーナーはESG投資の価値を 実感しています。 例えば、 回答者の14%はポ ートフォリオの50%以上をESGテーマに配分し ています。 アジアの機関投資家の間では、 ESG関連の投資比率が比較的低くとどま っているものの、 楽観主義者は、変化の土 台を築くのは上記のような調査結果である と考えています。 また、 調査結果によると、 ポー トフォリオにおいて持続可能テーマへの投資 比率を高めたいと考えて る投資家が多 いことも判明しました。 回答者の70%強は、 今後1年間にわたりポートフォリオでESG関連 の投資比率を引き上げる 「可能性が高い」(34%はすでにESGテーマに投資しており、 配 分を増やしたいと考えている)、 または 「可能 性が中程度である」 (37%はESGテーマに 投資するかもしれないが、 より詳細な情報、 あるいは付加価値の保証が必要である) と述べました。