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ダウンロード信用格付けはS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスやその他のS&Pグローバルの分析グループとは分析上、編集上独立したS&Pグローバル・レーティングによって付与されます。
S&Pグローバル・レーティングはS&P グローバル・マーケット・インテリジェンスによって算出されるクレジットスコアの作成に寄与も参加もしておりません。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスPDクレジットモデルスコアは、小文字の表記によって、S&Pグローバル・レーティングにより発表される信用格付けと区別されています。
サマリー
ファクター・ベースの投資手法は、より高いリスク調整後リターンを生み出す可能性があるため、株式投資家の間で一般的である。 [1]株式ポートフォリオの選択は通常、パフォーマンスとリスクのトレード・オフを伴い、複数の投資選好(環境・社会・ガバナンスのスコアが高い企業を重視するなど)と制約条件(流動性、投資期間、税金など)によって影響を受ける可能性がある。最近のリサーチでは、古典的なロングのみのパッシブ運用戦略を過去6年間にわたって適用し、S&Pグローバル・レーティングの発行体信用格付け(ICR:Issuer Credit Ratings)の構成要素であるビジネス・リスク(BR)と財務リスク(FR)から、潜在的なアルファ・シグナルを生み出すことができるファクターを特定した。
本リサーチは、「Financial and Business Risks: What Underlying Factors Tell Us About The Relative Strength Of Issuers With Similar Credit Ratings」のフォローアップ分析として、BRとFRのスコアがある一定期間での格付変更の確率を決定する重要なドライバーであることを示した。弊社の実証分析によると、FRが低いことはダウングレードの確率を下げるための十分条件ではなく、実際はBRがダウングレードよりもアップグレードの確率を高めるのに重要な役割を担っている。
表1:BB格付けカテゴリーで1年間にICRがアップグレードされた頻度からダウングレードされた頻度を差し引いた値
リサーチ結果
この分析では、パッシブ、時価総額ウェイト、ロングのみの運用戦略を使用し、運用期間はリバランスをせずに1年間と仮定。 2015年1月1日に当初の株式ポートフォリオを設定し、2015年末にすべてのポジションを閉じてパフォーマンスを調査する。それ以降の各年でこのプロセスを繰り返し、上記と同一のクライテリアに基づき、年初に新たな株式ポートフォリオを選び同年の年末にすべてのポジションを閉じる。この分析のためにS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのPortfolio Analytics(PA)プラットフォームを活用している。 緑と赤のポートフォリオのパフォーマンスを表2.aおよび表2.bにそれぞれ示した。ポートフォリオのパフォーマンスを測定するため、ジェンセンのアルファ(またはアルファ指標)、アクティブ・リターンおよびシャープ・レシオ(SR)などのリスク調整後リターン尺度を使用し、S&P500を絶対ベンチマークとして含めています。
ジェンセンのアルファまたはアルファ指標は、ポートフォリオの実際のリターンと、同量の市場リスクをもつベンチマーク・ポートフォリオで得ることができたであろうリターンとの差である。正の値が高いほど、予想と比べてポートフォリオのパフォーマンスが良かったことを示し、負の値はポートフォリオが予想よりも劣っていたことを示している。表2.aで示すように、緑のポートフォリオのアルファ指標は2018年が例外的にマイナスだが、期間全体でプラスとなっている。 表2.bで見られるとおり、赤のポートフォリオのアルファ指標はほとんどマイナスで、赤のポートフォリオのリターンが市場を下回っていたことを示している。
シャープ・レシオ(SR)はリスク調整後リターンの尺度であり、ベンチマークとの比較が行われる。SRは、ベンチマークまたは同一のカテゴリーの類似資産と比べて特定のポートフォリオに投資すべきかどうかに関する一つの考え方を提供している。緑のポートフォリオ全体のSRはベンチマークのSRよりも高く、緑のポートフォリオのリスク調整後リターンの方が高かったことを示している。逆に、赤のポートフォリオのSRはベンチマークであるS&P500のSRよりも低くなっている。
この分析では、ICRの基礎的要素すなわちBRとFRのスコアを用いて、2014年から2021年までにおける株式ポートフォリオのアルファ・シグナルを組み立てた。結果は以下のとおりである。
- 緑のポートフォリオ:企業のBRとFRの組み合わせはICRのより高い頻度で過去のアップグレードと関連:
- ポートフォリオは過去のリサーチ期間でベンチマークをアウトパフォームし、ポートフォリオのベータ値は1未満
- 2018年を除き、アクティブ・リターンはプラス、ベンチマークのSRよりも高いSR
- 赤のポートフォリオ:企業のBRとFRの組み合わせはICRのより高い頻度でのダウングレードと歴史的に関連:
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- ベンチマークをアンダーパフォーム、かつベータ値は1超でより激しく変動
- 既存のポートフォリオで悪化する可能性のある企業をモニタリングするための早期警戒シグナルとして活用が可能
結論
ファクター選択は定量的戦略の要であり、リスク調整後リターンの高い株式ポートフォリオの構築を可能にする。S&Pグローバル・レーティング企業クライテリアの基礎をなすBRとFRのスコアを使用することにより、市場をアウトパフォームする傾向にあるポートフォリオを構築しやすくなる。リバランスのない、ロングのみのパッシブ戦略に関する本分析は、投機的格付け企業の銘柄選択において有用な参考資料となり、またマルチファクター戦略に組み込むこともできる。
BRとFRのファクターは緑のセルから赤のセルに移行する企業の株式を除外することによって、ポートフォリオのパフォーマンスをモニタリングするアクティブなツールとして使用することもでき、その結果こういったファンドを精査の対象としたり除外したりすることが可能となる。債券の分野では、ハイイールドの債券や負債性金融商品への投資機会を判別するためにBRとFRのファクターを活用することができる。
RatingsXpress®のScores & Factorsデータセットを通じて、BRとFRのスコアについての詳細と発行体信用格付けの基礎となるスコアに関する透明性をご確認いただけます。
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