自動車のEV化でなくなる部品はある?パーツの進化や市場予測も紹介@weight>
「電動化の進展と2030年に向けた自動車部品メーカーの備え」 無料ダウンロード
本記事の内容に加えて、EV化の今後の展望についてアナリストの予測を記載しています。
「自動車のEV化でなくなる部品は?」「EV化で増える部品はある?」と気になる方は多いでしょう。
今後の予測としては、内燃機関に関わる部品が減少する一方、電気関連部品が進化し部品の統合なども進められる見込みです。
本記事では、自動車のEV化でなくなる可能性のある部品や、今後の部品の進化予測について徹底解説しています。
さらにバッテリーEV市場を予測する際のポイントや、考慮すべき点も紹介しているため、今後の動向や予測の際の参考にしてください。
※ 本文中のグラフにはぼかしを入れております。グラフの詳細をご覧になりたい場合は、フォームに必要事項をご記入いただき、資料をダウンロードください。
自動車のEV化でなくなる部品はある?
今後自動車の電動化が進められる中で、エンジン生産量の減少は回避できず、内燃機関の部品への影響は避けられません。
ここからは具体的にどのような部品が影響を受けるのか、紹介します。
過給機、インジェクター
需要減少が予想される内燃機関部品として、過給機とインジェクターが挙げられます。
各図はそれぞれ下記を示したものです。
- 左図:グローバル過給機の生産台数の予測
- 右図:燃料別のインジェクター生産台数の予測
いずれも2025年以降、生産台数は右肩下がりに推移すると考えています。
ただし過給機について、トヨタがプラグインハイブリッド車用に過給機付きのエンジンを開発していることを踏まえると今後は電動化専用のエンジンの開発、実用化が進むと予想されます。
これにより、過給機の生産台数の減少スピードが緩やかになる可能性はあるでしょう。
排気系部品
需要減少が予想される内燃機関部品に、排気系部品があります。
内燃機関に関してはユーロ6やユーロ7において、ガソリン車にも粒子状物質フィルター(GPF)を搭載する動きが出ており、将来伸びる部品であると予測されていました。
しかしエンジン生産台数の減少により、排気系部品も減少せざるを得ない状況です。
そのため今後は既存技術をうまく利用し、いかに電動化部品に展開していくかがポイントです。
実際、プレス技術を活かしてモーターコアの生産に事業シフトしたサプライヤーもみられます。
したがって排気系部品については、電動自動車専用エンジンの排気処理システムの変化に対応できるよう、十分な備えが必要です。
自動車のEV化による部品の進化予測
この章では、自動車のEV化が進展する中で部品がどのように進化するかについて解説します。
電気・電子部品の進化、高電圧化
自動車のEV化によって進化が予想される部品の1つは、エレクトロニクス部品です。
図は、インバータに使用されるスイッチングデバイスのパワー半導体のシェアを示しています。
電動式車両のシェアにおいては、特にバッテリーEVや高電圧対応のものを中心として、シリコンカーバイドの使用が増加すると予想しています。
新しいパワー半導体は、いずれの電動式車両においても電力消費量の削減という点で性能の向上に貢献できる部品です。
上記のようなデバイスや周辺部品(特に放熱部品、材料など)について、将来どのように変化していくかを予測し、柔軟に対応できるよう備えておく必要があります。
部品の統合化
自動車部品の統合化は、バッテリーEVの普及によって発生した新しい技術進化の1つです。
図は4月に開催された北京モーターショーのレポートからの抜粋です。
現在の最先端技術の一例として、下記が挙げられます。
- エアコンヒートポンプ部品の統合化(右の写真)
- 熱マネージメント部品の統合化(真ん中の写真)
- Eアクスル部品の統合化
エアコンヒートポンプ部品のモジュールは、主に中国で量産が進められています。
特に熱マネージメント部品では、冷媒系とクーラント向けの熱マネジメント部品を全てまとめてモジュール化されてきました。
このことから、部品統合化という考え方がバッテリーEVの登場によって一層進んでいるといえるでしょう。
さらに、部品の統合化技術はプラグインハイブリッド車にも応用されており、自動車部品製造の新たなトレンドです。
今後はこれらの新しい変化に対応できるような対策が求められます。
製品ポートフォリオの転換
自動車のEV化によって、製品ポートフォリオが転換すると予想されます。
図は、四輪駆動において減少/増加する部品を示しています。図の要点は、次のとおりです。
【減少が予想される部品】
・四輪駆動トルクマネージメントデバイス(Wet Clutchなど)
・四輪駆動部品(PTUなど)
【増加が予想される部品】
・バッテリー部を含む電動車両における、四輪駆動用のEアクスル
減少予想、増加予想を踏まえると、四輪駆動のシステムを機械式から電動式へ転換できるかが今後の生産の鍵であるといえます。
また、電動式への変化の中で、燃費向上を目的としてディスコネクト技術*が登場している点もポイントです。
*四輪駆動を使用しないときに車軸を切り離す技術
したがって、既存システムが機械式部品から電動式部品に応用(または転換)可能である場合、製品ポートフォリオの変換が重要となります。
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バッテリーEVにおける市場予測のポイント
この章では、バッテリーEVにおける市場予測のポイントについて解説します。
図は、将来どのような種類のパワートレインがシェアを占めるのかを予測したものです。
※バッテリーEV(BEV)は最下部のオレンジ色
今後、図で示した通りに遷移するかどうかにはさまざまな要因が絡んでいます。
ここでは将来のバッテリーEV市場の伸びを予測するにあたり、何に注目すべきか解説します。
固体電池市場の見通し
市場予測における重要なポイントの1つは、固体電池市場の今後にあります。
左図は電動車両のシェアと車両に搭載されるバッテリー容量の総需要を、右図はそのうちの固体電池(全固体電池と半固体電池を含む)のシェア予測を示しています。
全固体電池はバッテリーEVにおけるブレークスルー技術として期待されており、2020年代後半から徐々に量産が開始されると予想していました。
しかし実際は、2035年までの見通しをみても、市場に占めるシェアは少ないといえます。
そのためバッテリーEVにおける市場予測においては、全固体電池の量産技術をどの程度の価格で市場に投入できるかが重要です。
とはいえ、全固体電池のみにバッテリーEV市場の伸びを託すのは現実的ではなく、既存電池の進化にも注目しなければなりません。
超急速充電対応電池の動向
超急速充電対応電池の動向も、市場予測のポイントです。
左図にバッテリーの正極材のシェアを、右図には最新電池の充電性能をまとめました。
特に中国が開発した超急速充電対応の電池は、下記に示す性能から、バッテリーEVの欠点を補えると期待されています。
- 約10分で80%程度の充電が可能
- 約10分の充電で400km〜500kmの走行が可能
※各値はメーカーの発表資料に基づく
既に中国では超急速充電対応の電池を搭載した車両の量産が開始されていますが、実際の中国の消費者がどのように評価するかはまだ不明です。
一方日本では、今後市場に投入される電池について、トヨタが重点性能の目標値を達成してます(詳細は図を参照)。
しかし中国の最先端電池と比較すると、さらなる改良が必要である点は否めません。
したがって、バッテリーEVの将来性については、全固体電池と既存電池の進化の両方に注目する必要があります。
バッテリーEV市場の成長に関して考慮すべき要因
この章では、バッテリーEV市場の成長で考慮すべき要因を解説します。
急速充電能力と充電インフラ整備
バッテリーEV市場の成長には、充電インフラの整備が欠かせません。
なぜなら、バッテリーが超急速充電対応になり、車両側が300kW以上の超急速充電が可能な性能を備えても、充電インフラの性能に合わなければ車両とのミスマッチが発生するからです。
したがってバッテリーEV市場の成長には、充電インフラの進化も求められます。
充電インフラの整備については世界で進められており、日本では、e-Mobility Power社が350kW級の急速充電器の開発を開始、2025年頃から設置を行うと発表しています。
充電インフラとバッテリー、車両性能がバランスよく進化することが、バッテリーEV市場の成長の鍵と言えるでしょう。
※左図は、 車両の急速充電能力と充電受入能力を(弊社の車載充電器の予測データより)で、右図は充電ステーションの設置台数を示しています。
充電インフラ整備の利害関係
バッテリーEV市場の成長では、充電インフラ整備の利害関係も考慮する必要があります。
充電インフラの整備には、驚くほど多くの利害関係者が複雑に関与してきました。
例えば日本における最上位の関係者には国土交通省や経済産業省などがあり、迅速な意思統一は難しいといえます。
またいずれの国においても充電インフラの整備には多くの利害関係者が複雑かつ巧妙に絡み合っており、スムーズな設置に至っていないのが現状です。
バッテリーEV市場の成長は充電インフラの整備が条件であるため、インフラ整備に関わる利害関係者は考慮すべき重要な要因であるといえるでしょう。
バッテリー原材料の需要予測
バッテリーEV市場の成長で考慮すべき要因の1つは、使用されるバッテリーの原材料の需要です。
図は、弊社のバッテリーリサイクルのデータを示しています。
左図は使用されるバッテリー原材料の需要予測、右図は車両がEOL(End of Life)迎えた後、どの程度のバッテリーがリサイクルされるかを予測したものです。
※いずれのデータも弊社のバッテリーリサイクルのデータを使用
バッテリー原材料およびバッテリーリサイクルの規模は、図にあるように右肩上がりの推移を示しています。
ポイントは、バッテリー原材料やリサイクル規模の拡大スピードです。
バッテリーEVの製造にはバッテリーが必要不可欠であるため、リサイクルを含めた全体のエコシステムの構築速度がバッテリーEVの成長速度に影響を与えます。
したがって、バッテリー原材料の需要も今後の市場に影響をもたらす大きな要因です。
まとめ:自動車のEV化でエンジン系部品の需要が減少する
自動車のEV化が進むことで内燃機関の生産台数は減少しており、エンジン関連部品の需要も減少すると予測できます。
部品メーカーは、既存技術を電動化部品に応用するなどの柔軟な対応が必要です。
一方、自動車のEV化により電子部品は需要増が見込まれます。さらに、部品の統合化やディスコネクトなどの新しい技術も登場し、今後も電子関連部品は進化し続けると予想しています。
立場によって貢献できる分野や状況は異なりますが、いずれの企業であっても今後の動向には十分な対策、注意が必要です。