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自動車産業でのカーボンニュートラル変遷〜現状〜今後までを徹底解説

「電動化の進展と2030年に向けた自動車部品メーカーの備え」 無料ダウンロード

本記事の内容に加えて、EV化が進む中で自動車部品メーカーが備えるべき点についても解説しています。

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自動車産業における、カーボンニュートラルの現状や課題は今後の自動車産業において非常に重要です。環境に配慮した自動車製造は世界の常識であり、現状把握と今後の予測は必須ともいえます。

そこで本記事では、自動車産業でのカーボンニュートラルの変遷や現状、今後の動向についてを徹底解説します。

カーボンニュートラルに関する情報を網羅的に扱っているため、ぜひ最後までご覧ください。

自動車産業がカーボンニュートラルを達成するための要素

この章では、自動車産業がカーボンニュートラルを達成するために必要な要素について解説します。

図は、電動車両の種類とカーボンニュートラルに対する技術進化の要因を表したものです。

※上部の表(赤色)が電動車両の種類、下部の表(緑色)がカーボンニュートラルを達成するための要因を示します。

カーボンニュートラル達成に必要な要因

カーボンニュートラル達成のための主たる要因は、次のとおりです。

  • 電気の種類
  • 燃料の種類(水素を含む)
  • 水素の種類
  • 駆動用電池の性能向上
  • 電気・電子部品の性能向上(パワー半導体)
  • 内燃機関の性能向上
  • 軽量化や駆動系の性能向上
  • 部品ライフサイクルでの二酸化炭素排出量の削減 など

ここでのポイントは、要因の中にエネルギー政策が含まれていない点です。

一部でカーボンニュートラルなエネルギーを生産するサプライヤーが存在するものの、自動車産業や自動車部品産業の立場では事業範囲外の要因であり、個々のサプライヤーのみでは対応困難な状況です。

自動車部品サプライヤーの貢献

事業範囲外の要素を除き多くの自動車部品サプライヤーにとっての課題は、いかに二酸化炭素の排出を削減しながら、自社部品を製造するかにあります。

次の項目は、サプライヤーの努力なしには実現できません。

  • 電池性能の向上
  • エレクトロニクス部品の性能向上
  • 内燃機関の性能向上

また、部品ライフサイクルの検討、部品の軽量化などは車両の種類に依らず二酸化炭素排出量の削減に貢献できるため、今後の技術向上が望まれます。

カーボンニュートラルに対する自動車産業の成果

表は、現時点で、日本の市場で販売されている車両の燃費を比較したものです。

二酸化炭素の排出量削減について、自動車産業が達成した成果は主に2点です。

  • 走行時の二酸化炭素排出量が少ないディーゼル車を開発した
  • 車両のハイブリッド化で燃費が向上した

このことから、自動車産業ではカーボンニュートラルに対して一定の成果を挙げているといえます。

自動車産業におけるカーボンニュートラルの現状と課題

この章では、自動車産業におけるカーボンニュートラルの現状と課題について解説します。

ディーゼル車は二酸化炭素排出量の削減に貢献できるか?

日本において積極的にディーゼル車を活用しているメーカーはマツダのみであるのが現状です。

そのため議論するにあたり、同程度の大きさの車両について燃費を比較しました(値は実際のカタログ燃費)

結論として、ディーゼル車でもハイブリッド車と比較的遜色ない燃費を出すことが可能であるといえます。

表を見ると、ディーゼル車の特徴である高速燃費(緑色の文字)においては、ハイブリッド車よりも優れている部分が見てとれます。

したがってカーボンニュートラルという観点からは、ディーゼル車の長所を再考することも必要です。

プラグインハイブリッド車は本当に環境に優しいのか?

表は、プラグインハイブリッド車とハイブリッド車の燃費を比較したものです。

プラグインハイブリッド車の特徴は、外部電源から充電可能である点です。カーボンニュートラルな電力で充電し、その電力の範囲内で常に走行すれば環境に良いといえます。

しかし化石燃料由来の電力で走行した場合は、カーボニュートラルに貢献しているとはいえません。

またプラグインハイブリッドの場合、ハイブリッド車と異なりバッテリーを積む必要があります。

そのため電力不足によってハイブリッド走行に切り替わった際、搭載したバッテリーの重量分の燃費が悪くなることが予想されるでしょう。

表を確認すると、プラグインハイブリッド車であるにもかかわらずハイブリッド車という観点では、通常のマイルドハイブリッド車よりも劣っていることがわかります(赤字部分参照)。

したがってプラグインハイブリッド車であっても、状況次第では環境に良い自動車と言えなくなることもあります。

バッテリーEVは内燃機関車に代わる利便性を与えているか?

最後に、現在のバッテリーEVが内燃機関車に変わる利便性を与えているのか、という観点から、自動車産業とカーボンニュートラルについて解説します。

よく知られているように、バッテリーEVには下記のような欠点が存在します。実際、弊社が毎年行っている消費者意識調査では下記のような意見が得られました(詳細は図を参照)。

  • 走行距離が短い
  • 充電時間が長い
  • 低温時の性能の劣化が激しい
  • 充電時間が長い
  • 充電インフラが少ない など

バッテリーEVの成長は上記に挙げた要因により、徐々に鈍化しています。

したがって、バッテリーEV分野は改善、改良を重ね成長軌道に乗せるフェーズに突入しているといえます。

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自動車産業のカーボンフットプリント試算

自動車産業におけるカーボンフットプリントを試算する際のポイントは、下記の2点です。

  • 車両生産時のエネルギー
  • 使用される際のエネルギー

上記について、カーボンニュートラルなエネルギーか否かが問題点として議論されます。

これらのエネルギーを考慮し、「トータルライフサイクルの二酸化炭素排出量」を試算した結果は、下記の通りです。

【100%カーボンニュートラルなエネルギーで車両を生産、使用した場合】

・バッテリーEVの方が、プラグインハイブリッド車よりも少ない

【化石燃料で発電された電力エネルギーで車両を生産、使用した場合】

・プラグインハイブリッド車あるいはハイブリッド車でも、バッテリーEVと遜色ない

しかしながら、車が生産、販売される国や地域のエネルギー政策によって、車両ライフサイクルにおけるカーボンフットプリントが大きく変化する点には注意が必要です。

自動車産業でカーボンニュートラルを達成するための考え方

この章では、自動車産業でカーボンニュートラルを達成するための重要な考え方を紹介します。

自動車部品の地産地消

カーボンニュートラル達成には、部品の地産地消がポイントです。

上図は、今後のバッテリー生産の予測を地域ごとに示したものです。

現在、中国のバッテリーEVの世界進出に対し、欧米では下記のような動きが見られます。

  • アメリカ:IRAなどの自国優先の政策
  • 欧州:中国製バッテリーへの関税の検討

しかし政治的な要素を除きカーボンニュートラル達成という点のみを考えると、部品の輸送や車両輸送時の二酸化炭素排出量は削減していくべきです。

そこで、トータルでの二酸化炭素排出量を減らすためには、消費される地域で生産、使用する「地産地消」という考え方が重要であると考えています。

ただし、真にカーボンニュートラルを達成するためには、下記の要素を考慮しなければなりません。

  • 各国のエネルギー需要
  • 生産時に使用されるエネルギー需要

政治的な面を無視できないとしても、カーボンニュートラルという面からは部品製造に最適な地域なども考える必要があります。

完全にカーボンニュートラルなエコシステムの確立

自動車産業においてカーボンニュートラルを達成するには、リサイクルまで含めた完全にカーボンニュートラルなエコシステムを確立する必要があります。

車両のバッテリー製造だけでなく、リサイクルまで行えるクローズドな仕組みを構築することで、正常なサイクルで市場が回り完全な形での成長が可能です。

まとめ:カーボンニュートラルの達成にはリサイクルまでの仕組みが必要

車両ライフサイクルにおけるカーボンニュートラルにおいては、メーカーやサプライヤーで対応できる要素のほか、各国のエネルギー政策など事業活動範囲外の要因も存在します。

そのため、自動車部品サプライヤーが貢献可能な範囲で、自社部品の製造時に排出される二酸化炭素量を削減することが重要です。

また、カーボンニュートラルの達成には、下記の考え方が重要です。

  • 地産地消
  • 完全にカーボンニュートラルなエコシステムの確立

政治的な要素も絡むため実現は簡単ではありませんが、真にカーボンニュートラルを達成するため目指すべき目標としましょう。

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