
【2024年版】USMCAを取り巻くBEVの状況と今後の動向を徹底解説
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本記事の内容をよりグラフやビジュアルを用いてわかりやすく解説しています。
USMCAと電気自動車(BEV)の状況について、興味を持っている方は多いでしょう。USMCAはアメリカ、カナダ、メキシコ間で結ばれた貿易に関する協定であり、特に自動車産業に大きな影響を及ぼすとされています。
この記事では、USMACAにおけるBEVの状況と今後の予測について解説します。関係する3カ国の状況を知ることで、今後の戦略や方針の策定の参考としてください。
北米における自動車生産の概況
北米でのBEVの普及率は低く、現在のシェアは9%程度で1割も満たしていません。しかし今後は、44%にまで飛躍的にシェアを拡大すると見ています。ただし短期的な視点ではIRA(インフレ抑制法)、排出規制などの影響を受けるため、いくつかの困難が起こるでしょう。
また、北米のセグメントはICEに大きく依存しており、今なお高い人気があります。そのため、BEVがICEを押し退けて生産量を上回るまでにはある程度の時間を要するとみられます。
現在のICEの人気と今後のBEVのシェア拡大予測などの状況を鑑みるに、各自動車メーカーは、投資すべきICEプラットフォームの見極め、限られた予算での、BEVへの効果的な投資戦略などが課題となるでしょう。
その結果、従来のワンサイズ車両戦略ではなく、ICEやハイブリッド、BEVなどのさまざまなバリエーションの車両製造のチャンスが得られると予想しています。
一方、新しいエンジンのプラットフォーム開発は減少傾向です。しかしエンジンプログラムにはまだ多くのチャンスが残されており、汎用性の高さやトレンドへの柔軟な対応力などを備えたものが求められます。
BEVに関する「アメリカ・カナダ・メキシコ協定(USMCA)」の状況
この章では、アメリカ・カナダ・メキシコ協定(USMCA)におけるBEVの状況について概説します。
アメリカ合衆国の状況と今後の予測
アメリカのBEV市場は120万台規模に達しており、その大半はICEが占めている状況です。
現在での予測では、近い将来、従来の自動車メーカーによるBEV製品の拡大と低コストモデルの開発が発展すると見ています。
とはいえ、現時点ではBEVがすべての消費者に向けて製造されているわけではありません。
一方、ICE車両においてはSUVやライフスタイルビークルに代表されるように、あらゆる用途に適した製品が製造されています。
ICE車両と比較するとBEVの製品バリエーションは限定的であるのが現状ですが、今後は自動車メーカーグループの努力によって製品の多様化が起こると予想しています。主な理由は自動車メーカーによるポートフォリオの具体化の進展であり、これがBEVの短期的かつ積極的な拡大の原動力になるでしょう。
加えて、ハイブリッド分野にもチャンスがあります。ハイブリッド車両がオプションとして付加されている場合、ハイブリッドにシフトする可能性が高く、中期的にはハイブリッドが標準化されると予想されるからです。
カナダの状況と今後の予測
グラフを見てわかる通り、カナダの自動車生産は全盛期と比較すると大きく低下しています。2018年の段階では、カナダの自動車製造は基本的にICE車両のみであることがわかります。
しかし現在の予測では、今後はICE車両が減少するとみています。その理由は、BEVについて、メーカー各社が長期的な投資の具体案を模索、資本の分配などについて検討しているためです。
そして2026年には、車両推進システムの種類が大幅に多様化することが見込まれています。
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メキシコの自動車生産と販売状況
メキシコでの自動車生産台数は、2024年から2025年にかけて新型コロナウイルスによるパンデミック前のレベルにまで回復すると予想されています。
このような回復はメキシコだけでなくカナダでも同様です。自動車生産はICE車両を中心に生産力を向上させるものとみています。
現在メキシコでは、今後の多様な自動車開発にむけてその生産・開発能力を大幅に改善しています。これらの取り組みには、サプライチェーンやサプライヤーなどを中心にさまざまな課題が伴いますが、新しいステージへの移行それ自体への期待値は非常に高いといえるでしょう。
2028年以降、メキシコでは大きな、かつ多くのチャンスが到来すると予測しています。
ICE自動車の生産量がパンデミック以前の水準に戻るとともに、メキシコにおけるハイブリッド車両の生産も増加する見込みです。
また地域内で優れたBEVの生産も増加するとみており、今後の展開が期待されます。
また2023年、メキシコでは10万ユニットを超える量のBEVが販売されました。
現時点では、このBEVの成長は維持され、2028年以降には年間100万ユニット以上にまで増加する見込みです。
まとめ
USMCAに関わるいずれの国においても、今後はBEVの生産量が増加すると予測しています。
2024年現在でも、各国の自動車のシェアはICE車が非常に高いのが現状です。しかし今後は、個々の自動車メーカーがBEVへの投資を強化し、さまざまなシチュエーションに対応できるようなBEVの開発が進展していくことで、状況は大きく変化するでしょう。
アメリカ、カナダではICEへの人気は今後も続くと予想されますが、コスト面や性能面での課題を解消することでBEVの普及が加速する見込みです。
またメキシコでは、2023年時点で既に10万以上のBEVユニットが生産されており、今後数年でさらに10倍以上もの生産量になると予測されています。