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【国別】南米におけるトラック・バスの需要の変化・市場の動向について解説

南米のトラックやバスの市場についてのレポート 無料ダウンロード

本記事の内容に加えて、市場全体観や課題についても解説しています。

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南米におけるトラック・バスの需要や市場は変化しており、市場の不安定さや低迷が課題となっている地域は少なくありません。南米における市場分析では、中長期的な目線が必要となります。

本記事では、南米のトラック・バスの経済の概要や市場の見通しなどについてデータを元に解説するので、ぜひ最後までチェックしてください。

S&PグローバルモビリティにおけるMHCVについて

南米におけるトラック・バスの需要の変化・市場の動向を解説する前に、S&Pグローバルモビリティにおける中型&大型商用車 (MHCV)のクラス分けについてご紹介します。

上記の表は車両の従量や長さによるクラス分け表しており、トラックは重量とカテゴリー、バスはGVW、長さ、座席数によって区別されています。S&Pグローバルモビリティにおいて、MHCVはCLASS4からとなります。

MHCVはCLASS4からであることを前提に、次章から南アメリカの大型商用車の需要について解説していきます。

南米の中型・大型商用車のマクロ経済概要

南米のMHCVをマクロ経済的視点で見ると、地域全体の成長率は勢いを失うと見込まれています。本章では、ラテンアメリカ・ブラジルの今後の見通しについて詳しく解説します。

ラテンアメリカの今後の見通し

ラテンアメリカ(ブラジル・アルゼンチン・コロンビア・チリ・ペルー)の実質GDPは2024年時点で平均2%の成長が予測されており、前向きな見通しだといえます。

ただしアルゼンチンは例外であり2024年時点で1〜1.2%の成長見込みに留まることから、以前の予測と比較して勢い・成長が失われていることがわかります。

アルゼンチンの成長率が低い理由は、不安定な政治・経済が続いているためです。またアンデス地域で自然災害の影響があることも、深刻な状況に陥っている原因のひとつです。

またブラジルの経済成長の主な原動力・農業では、エルニーニョ現象により予想される作物の生産量が約6%減少するため、特に南部で農業さらに製造業に影響を及ぼします。

さらにラテンアメリカ全体で高金利・高い資本コストの状況にあり、最終的には投資が難しくなる可能性が高いこともあげられます。

ラテンアメリカ内のほとんどの国で金融緩和が始まりましたが、中立金利には程遠い状況です。中でもコロンビアなど一部の市場では、食料をはじめとするインフレに直面しており、中立金利の実現を遅らせる可能性が高くなっています。

ブラジルの今後の見通し

ブラジル経済は自然災害の影響を受けていますが、中長期的な目線で見ると将来は非常に前向きな見通しで、成長が期待されています。ブラジルは商用車需要の主要国であるため、前向きな見通しであることは商用車の市場にとって非常によい兆候だといえるでしょう。

成長が期待できる要因として、中央銀行では2025年まで金融緩和政策を実施することがあげられます。為替レートにおいても、10年間は厳しい状況になるとはいえ、一次産品が世界市場で競争力を維持できるため、一次産品の輸入に依存しているブラジルにとってはプラスでしょう。

一方、経常収支においては下振れリスクがあるものの、政府は経費を増加させています。これにより税収・赤字の増加につながる可能性があり、インフレの高まりや企業の信頼の喪失につながることも考えられます。

南米・地域別需要の見通し

2023年においては、2022年と比較して商用車販売台数が14%下がる結果になりました。

その理由は、「高金利によって与信が制限されていること」「悪天候により農作物の生産に影響を及ぼしていること」「政情が不安定であること」の3つです。

これらの不安定さは2024年も依然として影響を与えられると考えられるため、フリート契約の更新が延期される可能性があります。また政情が不安定な状況が続くと市場の不確実性を高めることになり、一部の事業者が投資を延期することも考えられます。

次に右の図を見ていきます。ブラジルは排出基準の変更により、-12.4%と2桁の影響がありました。コロンビアでは排出基準の変更だけでなく、政情の不安定さによる悪影響が市場パフォーマンスにつながっています。

南米・国別トラック市場の見通し

本章では、各国のトラック市場の見通しについて解説します。

1.ブラジル

2023年の販売台数は、2022年より177%減少しました。減少した原因には、ユーロ6が2023年1月に国内で適用されたことが考えられます。ユーロ6の適用により新車価格は15~20%上昇するため、売り上げの減少は当然のことだといえます。

また2024年において当初は6~7%増加する前向きな成長が見込まれていましたが、ブラジル南部で洪水が発生したことにより、OEMのサプライチェーンに影響を及ぼしています。S&Pグローバルモビリティでの見通しも2%ほどとなっており、大幅な成長は見込めないと考えています。

そして総重量6~15トンの中型トラック販売台数は成長がほとんどなく、やや停滞している一方、大型トラックは非常に上手く機能している状況です。

S&Pグローバルモビリティでは、2023年の取引量が177%増加しています。2023年1月にユーロ6が適用されたとはいえ、ユーロ5の車両の駆け込み需要があったため、2023年の取引量が増加したと考えられます。また生産リードタイムがあるバスの場合、2022年に発注されても2023年に納入となることもあげられます。

この流れにより、2024年・2025年の契約や注文においても前向きな見通しであるといえます。加えて、政府の「Cameo schola プログラム」により2024年から2025年にかけて約15,000台のバスが市場に投入される予定であるため、短期的に見ると取引量が大幅に増加するでしょう。

しかし、プログラム終了後には取引量が抑制されることとなるため注意が必要です。

ブラジルは統合された市場かつ南アメリカの主要国であるため、欧州のOEMサプライチェーンはブラジルを拠点に事業所を設立しています。

中型トラックでは、フォルクスワーゲンとメルセデスベンツがシェアを争っています。イヴェコは上位ブランドには劣るものの、大幅な進歩を遂げていることにも注目です。

大型トラックでは、ダフがブラジル内でかなり大きなシェアを獲得しています。注目したいのは、ヒュンダイやフォトンなどアジアの OEMサプライチェーンが含まれていないことです。また政府の「Cameo schola プログラム」によりフォルクスワーゲンとイヴェコが大きな影響を与えると考えられます。さらにブラジルがバスの電化計画を急速に進めているため、BYDは今後数年間で重要なプレイヤーになるでしょう。

2.アルゼンチン

アルゼンチンの商用車市場は、現在起きている経済ショックによって大きな打撃を受けています。アルゼンチンは過去数十年にわたり政府から補助金を支給しており、それに依存している状態でした。

しかし、政権交代の際に補助金の支給が廃止されたため、アルゼンチンはある意味で経済ショックに陥り、現在ではインフレ率が3桁に達し300%近い状況となっています。

また、高金利の影響で国内の輸送活動は2024年4月までに40%近くまで減少すると見込まれており、商用車市場にも大きな影響を与えるでしょう。

トラック部門を見てみると、2023年は比較的安定力・回復力があり0.4%のわずかな減少でしたが、2024年に回復力は見込めず、22%も減少することとなりました。

一方、2025年には15%近くの成長が見込まれており、アルゼンチンの商用車市場は大きな可能性を秘めているといえます。また、アルゼンチンは農業に強いことも市場に可能性を秘めている要因のひとつです。

ただし、バス部門は10年以内に鉱業プロジェクトが開始されることより、悪影響を受ける可能性があります。輸送量で見ると、2023年に23%近く減少し、2024年にはさらに22%減少すると予想されています。インフラ開発やバスの更新は影響を受けるため、2022年の販売台数に戻るには時間がかかるでしょう。政府が経費の削減をおこなうなど、バス部門の成長回復を慎重に進めている状況です。

アルゼンチンはブラジルと非常に似た市場で、イヴェコとメルセデスベンツ、フォルクスワーゲンなどのOEMメーカーがシェアの大半を占めています。

ブラジルの市場と大きく違うのは、イヴェコとメルセデスベンツが主要なOEMであることです。特にイヴェコはアルゼンチン内に主要な事業拠点を置いているため、大型トラック市場で圧倒的なシェア、中型トラック市場でも高いシェアを誇っています。

S&PグローバルモビリティではじめてのアジアOEMである日野自動車は、アルゼンチンでは比較的新しいサプライチェーンですが、短期間で中型トラック市場にて成功を収めています。3~4年前にシェア1%だった日野自動車が10%にまで成長していることは、他のメーカーが各国に進出したのと同様の道筋を進むといえるでしょう。

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3.チリ

チリは2023年には28%、2024年には23%の下落が見られるなど、3年連続で市場縮⼩が続いている状況です。ミクロ経済などの混在によって資本コストが高くなったことにより固定投資を遠ざけた結果、継続した市場縮⼩となりました。

また、憲法改正が進んでいることも、新たな投資の遅延や妨げに影響を及ぼす可能性がある要因のひとつです。

しかし、市場縮小は落ち着き始め、2025年には販売台数が増加すると予測されています。特にバス部門において、EVバスの導入により販売台数が増加する可能性があります。

2023年だけで1,200台近くのEVバスを購入したため、全バスのほぼ50%がすでに電動化されるなど先進国と同様のレベルです。

一方、2024年には基本のサイズが小さくなったことにより、EVバスの販売台数が抑制されています。しかし、政府のプログラムに依存しているチリは販売台数への影響が出やすく、政府次第で2025年には回復する可能性があります。

輸入車に課される税金が非常に低いチリでは、トラック市場へあらゆるメーカーが参入しています。

例えば、中型トラック市場を見ると、シボレーやFuso、日野自動車、Jac、フォルクスワーゲン、ヒュンダイといったトップクラスのメーカー、大型トラック市場では20以上のメーカーがシェアを占めています。ブラジルやアルゼンチンと異なりあらゆるメーカーが参入しているため、フォトンやBYDが注目されている状況です。また、中国の小規模なEVバスメーカーが参入していることも、特徴のひとつです。

バス市場では大半が中国から供給されています。

4.コロンビア、エクアドル、ペルー

コロンビア、エクアドル、ペルーでは投資の低迷、⾦利の⾼騰、国内問題により商用車の市場に影響が出ています。

コロンビアは新政権となったこと、エクアドルは発展が進んだことで治安面に危機が訪れています。治安面の危機を脱するため増税されたことで、コロンビア・エクアドル・ペルーの地域全体では同様の問題が発生しました。

そのためコロンビアで2023年に新しい排出ガス基準が発効し、ブラジルと同様のユーロ6が適用されたこともあり、2023年は2022年から33%減少しています。しかしコロンビア・エクアドル・ペルーの3か国では2024年にある程度の成長が見られ、2025年には24%の成長が期待されています。

また、エクアドル・ペルーはリチウムと銅の採掘プロジェクト、コロンビアは炭化水素生産量の増加プロジェクトがあることから、10年以内に3か国の市場が拡大する可能性があります。

ここからは市場が拡大する可能性のある3か国について、それぞれの市場を詳細に解説します。

コロンビア

コロンビアは多様性のある市場で、エクアドルやペルーと異なり北米のメーカーがトップの座を占めています。そのため、どの地域でも大きなシェアを獲得しなかったインターナショナルやケンワースが参入しています。

中国のメーカーが他国より大きなシェアを獲得していることも、特徴のひとつです。大型トラック部門ではシャクマンが7%、中型トラック部門ではフォトンが16%、バス部門では市場の4分の1を占めています。特にバス部門で大きなシェアを獲得しているのは、コロンビアの電化ソリューションの促進が理由でしょう。

エクアドル

エクアドルでも、多様なメーカーが参入しています。大型トラック部門を見ると、19のブランドが市場の29%を占めていること、そのほとんどが中国のメーカーであることがわかります。特に中国重型汽車集団はもっともシェア率が高く、エクアドルの市場で成功を収めているといえます。

バス部門を見ると、日野自動車はミニバスの分野においてシェアを独占している状況です。エクアドルのバス部門だけでアジアのメーカーが成功を収めているのは、エクアドルとアジア諸国がさまざまな自由貿易協定を結んでいるためです。

ペルー

ペルーもアジア諸国と良好な関係であるため、アジアのメーカーが多くのシェアを獲得しています。しかし、アジアに加えヨーロッパのメーカー、そして北米のメーカーが均等にシェアを獲得しているのがペルーの市場の特徴です。

南米の代替燃料の動向

現在、南米の代替燃料の市場シェアは低い状況です。

コロンビアとペルーでは天然ガス燃料自動車の人気が高まり、バッテリー式電気自動車の人気が下がっています。アンデスでは電気バスが非常に普及しているものの、天然ガス燃料自動車はそれほど普及していません。

全体として代替燃料バスの市場シェアは0.3%未満ですが、ブラジルのバスEV化計画が進めば2024年に市場シェアが変化すると見込まれています。

ブラジルなど南米で遅れがある理由は、バッテリーと天然ガスの給油・再充電をおこなうインフラの運用・機能ができていないことにあります。

また、インフラ整備の資金が不足している状況であること、ソリューションを取り入れ実装するコストをカバーできないことも、ソリューションの普及に時間がかかる原因のひとつです。さらに、公共政策が常に変化していることで市場に遅れが出ることも要因です。

これらの課題を解決し、ソリューションを促進するためには短期的・長期的な取り組みを設定して進める必要があります。

まず、短期的にはバス電化計画の進展、代替燃料量の支援の動きが期待できます。S&Pグローバルモビリティでも、自社の燃料開発に向けて開発を進めている状況です。また長期的には、排出基準の厳格化や水素の可能性の拡大が期待されています。

まとめ

本記事では、南米におけるトラック・バスの需要の変化・市場の動向について解説しました。

前向きな見通しである国・地域がある一方、大きな課題を抱えており市場が低迷している地域もあります。

南アメリカの大型商用車の需要を正しく理解するためには、各地域の経済や市場の見通しについてしっかりと理解しておくことが必要です。また、中長期的にどのように考えればいいかも理解しておきましょう。

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