
南米のトラック・バスの生産予測|現状の課題や商用車の代替についても
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本記事の内容に加えて、国別の需要について解説しています。
南米のトラック・バスの生産予測については、現在、スール州の洪水が市場や生産量に影響を及ぼすなどの課題を抱えています。
本記事では、南米のトラック・バスの生産量について解説します。業界全体が抱える課題についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
世界のトラック・バスの生産量
世界のトラック・バス(6トン以上)の生産量としては、2023年と比較して0.8%の緩やかな成⻑が⾒込まれています。
ここからは、各地域の生産量・経済についての成長やその理由などを説明していきます。
大中華圏
パンデミック後、大中華圏では6.2%近くの成長が見込まれ2023年には回復する結果となりました。それも相まって、大中華圏のトラック生産量は2024年にも増加すると予想されていますが、緩やかな成長にとどまる見込みです。
また、最大のトラック市場である大中華圏が実施した公害防止キャンペーンは世界中に広まり、現在は世界中の多くの地域で排出ガス規制が強化されています。
北米
中東で2024年に各企業の業績に影響を与える紛争が起きたことで、アメリカではインフレと高金利という経済的な課題に直面しています。具体的には、サプライチェーンの生産プロセスがイメージ通りに進まず、生産能力も低下している状況です。
ヨーロッパ
2027年に開始されるEPAの規制は、2026年に起きると言われている全世界のバブル経済に影響を及ぼし、駆け込み需要が世界中で起きるようになると言われています。
その中で排出基準を設けているヨーロッパは、経済が減速する可能性が高いです。
一方、トラックおよびバス商⽤⾞の⽣産需要は2024年時点では減少しますが、高いインフレが消費を促進することにより、2025年以降は回復傾向にあります。結果として、ユーロ7が適用されるようになるでしょう。
南アメリカ
南アメリカにて成長している要因には、ブラジルのトラック生産の高い供給量があげられます。南アメリカ内だけでなく、アメリカの地域全体の需要が高まっていることにより、供給量が高まっているといえます。
またメキシコや中東、アフリカへの輸出もおこなうOEMサプライチェーンがあるため、南米に加え世界中に供給できていることも、供給量が高まっている要因のひとつです。一方、北米と同じようにインフレと高金利という経済的な課題に直面している点は課題です。
中東/アフリカ
中東/アフリカでも、排出ガス規制という新しい規制が広がっています。拡大している理由として、建設業界から影響を受けていることがあげられます。
アフリカで実施されているインフラプロジェクト・住宅プログラムのコストの増加がトラックの生産・需要に影響を与えるようになりました。
世界の排出ガス基準
アメリカ諸国、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、ペルー、チリはCO2の削減が見られている状況です。
S&Pグローバルモビリティでは気候変動の緩和を目指して世界各国と連携し、CO2の削減や、燃料の削減、エンジニアの増加をサポートしています。
欧州の排出ガス基準
加盟国の中で、特にブラジルとアルゼンチンは需要と供給面において同様な影響を与えている一方、南米全体では多様性が見られています。S&PグローバルモビリティはアジアのブランドやOEMと地理的位置で貿易協定を結んでいるため、欧州での導入が非常に重要です。なぜなら、南米においてテクノロジーの新しいトレンドが到来し、欧州の南米への投資が促進される可能性が高いからです。
しかし、欧州で新しい排出ガス基準が導入され規制が強化されると、S&Pグローバルモビリティに大きな影響を与える可能性が高くなります。CO2排出量に関することが目標であるユーロ7は、新タイプのトラックに2028年に開始され、他の自動車では段階的に開始されます。そのため、改めて南米での商用車製造について理解することが大切です。
南米での商用車製造地域
南米での商用車の製造は、世界の経済や商用車生産者にとって非常に重要な要素です。
世界中のメーカーの中でブラジルは世界第5位の生産量で、中国や南米、インド、メキシコと似たような生産力を持っています。
ブラジルは地元からの需要とミクロ地域への供給があるため、10年後を見据えても同じポジションを維持すると予測できます。
コロンビアでは世界中のメーカーの2つの工場があり、商用車の組み立てをおこなっています。
コロンビアで生産されるトラックとバスは地域の需要とエクアドル・アルゼンチンへの輸出に向けておこなわれています。
また、アルゼンチンでは地域の需要を補うために生産されており、輸出はほとんどおこなっていません。コロンビアとアルゼンチンは貿易協定を結んでいるため、コロンビアに輸出する可能性はありますが、過去の生産量と比較して非常に少量で、今後も生産量が少なくなるといえます。
そしてブラジルでは、ブラジル資本の投資家が100%出資しているAGが重要な位置を占めています。
通常、Agraleはブラジルの新規プレイヤーのパートナーですが、Fotonはこれらのプロジェクトを放棄し、ブラジルでの中長期的な投資を展開しました。
しかし、ブラジルとアメリカ全体でトラックの販売・運営をおこなっており、国内に多くの拠点をおき焦点を絞っていることは素晴らしいことでしょう。
メルセデスベンツやフォルクスワーゲンは、ブラジル内で特にトラックの需要があり少し北に拠点をおいています。
ヒュンダイやイヴェコはブラジル政府が提供する財政上のメリットを活用して、今後数年間でEVプロジェクトなどの新しい2つのプロジェクトを計画しています。
世界的な目標であるCO2削減を達成するために、代替燃料が段階的に導入されていくでしょう。
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南米の中型・大型商用車の生産状況について
中型・大型商用車の生産の約80%は南米でおこなわれており、その中でブラジルは地域でもっとも多く商⽤⾞を生産しています。
本章では、ブラジルをピックアップして中型・大型商用車の生産状況について見ていきます。
ブラジルのGVWによるトラック生産状況
本章では、建設業界・農業に焦点を当ててトラック生産状況を解説します。
農業はブラジルにとって非常に重要な第一次産業で、ほぼ100億ドルを農業が占めている状況です。そのため、ブラジルのトラックの30~40%は農業に供給するものとして生産されています。
また、S&Pグローバルモビリティではclass8のトラック生産のほぼ40%を農業に使用していることも特徴のひとつです。
加えて、用途の多さや柔軟性がメリットであるS&Pグローバルモビリティのトラックは、class6はUセグメントのOEMにとって重要なものです。そのため、ブラジルの大都市の会社に委託し、各地域まで輸送するサービス全般を請け負っています。
輸送においては、新しく禁止される事項が適用されました。しかし、トラックは指定地域のラッシュ時にも各地域を横断する資格があるため、各地域まで輸送するサービス全般を提供できます。これらからも、S&PグローバルモビリティのトラックはOEMにとって重要なものだと言えるでしょう。
トラック業界の課題
業界全体を見ると、サプライチェーン・需要・法律・公共政策・労働力・電動化において課題があります。
サプライチェーンの課題は、業界全体を支えるスール州で洪水が発生し、トラックの生産に影響を与えていることです。サプライチェーンでは大規模な変動が起きるため、2024年の生産にPOSシステムにリスクが生まれる可能性があります。
また、サプライチェーンの制約によって一部企業がトラック生産の中断を発表したため、労働力に対しても課題があり、規制や公共政策にて生産を止めないように促進している状況です。
S&Pグローバルモビリティには、2つの大きなプロジェクトがあります。
1つ目は、ブラジルだけでなく代替分野へ中長期的な投資を目指し、新しい自動車の制度をスタートさせることです。もう1つは、ブラジルでの輸送の効率化と増加を目標とするプロジェクトの進行です。実際には、多くの投資を受けている公共交通機関に参入する可能性も秘めています。
南米における短期的な代替推進力の想定
各企業は欧州の技術に倣って電動化を推進するために新しい技術を導入し、テストに向けて投資しています。
例えば、SKやVEなどのclassAのトラック用の代替FSがあげられます。
CNGまたはVEを搭載したトラックの提供も、電動化を推進するためのプロジェクトのひとつです。
しかしブラジルで電動化を推進するために新しい技術を取り扱うのはハイリスクです。なぜなら、ブラジルでは天然ガスの給油・再充電をおこなうインフラの運用・機能ができていないからです。
しかし、運用・機能できていない面を活用して、CGトラックの使用が検討できるようになるなど、短期的に見ると期待できることがあるかもしれません。これを踏まえて、次章では短期的に期待できることの見解を解説します。
リオグランデドスル州での洪⽔が南⽶の⽣産に及ぼす影響
右の図を見てわかる通りインフラストラクチャには大きなギャップがあるため、短期的に期待できる面があります。各地域のOEMは生産中断についてどのような認識を持っているのか、そしてS&Pグローバルモビリティが検討している2024年の生産にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
南アメリカのバス生産状況
欧州・ブラジル・コロンビア・チリでは、既にBRTが導入されています。チリとコロンビアには電気バスまたは電気バスを動力源とする車両があるため、大都市モビリティの優れたソリューションとなる可能性が秘められています。
そのため、ブラジルがこの分野でどのように取り組むべきなのかも理解できるでしょう。
商用車の業界は都市部にバスを提供することに焦点を当てており、バスアプリケーションを供給するための専門知識も持っているため高い普及率を誇っています。
特にブラジル・コロンビア・チリのBRTはすでに構造化がされており、他国よりも早い段階でいくつかのプロジェクトを発表しました。
BRTは大都市モビリティのための優れたソリューションとして考えられているため、ブラジルは他国の技術の導入とBRTの構造化に期待を抱いています。
アルゼンチンとコロンビアにおけるトラック・バスの⽣産状況
次にアルゼンチンとコロンビアにおけるトラック・バスの⽣産状況を見ていきましょう。
地域の需要、コロンビアにおいては少数の輸出に焦点を当てて生産を進める場合は、業界にとっていい影響を与えません。
しかし、アルゼンチンとコロンビアの経済は今後数年間徐々に回復していくと予測されています。特にアルゼンチンでは、フォルクスワーゲンがアルゼンチンで組み立て工場をつくるなど、トラックやバスを生産する新しい企業があるため、順調に経済が回復していくでしょう。
2024年の生産量は2023年と比較して低いですが、BRTへの置き換えをすることでいい傾向になる可能性があります。
まとめ
最後に需要・生産のそれぞれの面において重要なポイントを解説します。
需要面のポイントは以下の通りです。
- ブラジルの需要は回復傾向だが、スール州の洪水が市場に影響を及ぼしている
- 地域全体として農業がトラック生産の主な原動力となっている
生産面のポイントは以下の通りです。
- ブラジルは世界第5位のトラック生産国で、アンデス地域 とメルコスール地域にトラックを供給している
- OEMで焦点を当てるべきなのはclass8とclass6
- スール州の洪水が生産へのリスクをもたらす
- アルゼンチンのトラック生産は成長傾向な一方、コロンビアは課題に直面する
南アメリカの大型商用車の生産予測について、しっかりと理解しておきましょう。
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