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日本の各メーカーにおける自動車生産台数の展望|地域別の推移も解説

2026年ライトビークル市場予測レポート 無料ダウンロード

本記事の内容に加えて、世界のライトビークル生産台数の展望も解説しています。

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現在、「日本の自動車生産の状況がどうなっているのか」「各メーカーの生産実態は?」と関心を持つ方は少なくないでしょう。

本記事では、日本の自動車メーカーにおけるグローバル市場の短期的な生産台数の予測・展望について解説します。各自動車メーカーにおける地域別の生産台数推移についてもまとめたので、今後の予測や現状理解に役立ててください。

トヨタ・ダイハツの自動車生産台数推移

上図は、トヨタおよびダイハツの自動車生産台数推移をまとめたものです。各グラフの横軸は年次、縦軸は生産台数を示しており、単位は百万台です。

まず、トヨタについては、現在マルチエナジー戦略が奏功しています。短期的に見ても、日本の生産は年間300万台の生産を堅持する見通しです。また世界的なBEVの需要鈍化、FHEV、ICEの需要増加に伴い、輸出機会が拡大すると見ています。

一方、今後トヨタではICEの残存者利益を得るため、北米以外にも中東、アフリカ、南米に向けて輸出を増やしていくと見ています。しかし中国系自動車メーカーも同地域に輸出を増やしているため、競合するリスクが懸念されます。

北米ではハイブリッドが好調であり、生産台数の維持・増加が見込まれます。特にハイブリッドの一部モデルについては、北米在庫が通常に戻っていない状況から、在庫挽回チャンスあると見ています。さらに改良版のPHEVの投入計画もあると認識しており、今後も競争力維持が維持されていくと考えられます。

中国では、足元で価格競争が継続中で、販売生産で苦戦が続いていく見込みです。ハイブリッドについては一定の競争力はあるものの、BYDをはじめ中国系自動車メーカーとの価格競争や中国政府によるNEVの支援などを受けて、今後も苦戦が続いていくと見られています。

ダイハツについては、認証不正の影響が残り続けると考えられています。短期的には、本年初頭の工場稼働停止や、本年11月以降の一部モデルにおける生産停止などを受けて本年の生産台数が減少し、例年の半数程度(年産50万台規模)に推移する見通しです。

また、次期モデルの開発が停滞しており、フルモデルチェンジ車の投入が遅れています。これにより新車効果が表れにくく、短期的には競争力低下が見込まれています。次年以降も年産80万台規模で推移すると想定されており、厳しい状況が続く見込みです。

ASEANでは認証不正による工場の稼働停止が起こらなかったことから、生産への影響は軽微でした。しかしASEAN全体の景気に左右されており、生産台数が伸び悩んでいます。中長期的に見ても、次世代プラットフォームの「DNGA」の開発が遅れており、今後競争力が失われるリスクを抱えている状況です。

日産・三菱の自動車生産台数推移

日産については、2026年度までの中期計画において目標とされている「2023年度比で100万台増の販売台数」の達成が困難であると考えています。

日本では短期的にはBEVの需要鈍化によりICEやe-POWERの輸出機会が増加しているものの、北米向けの在庫もすでに通常に戻っていることから、北米向けへの生産に関しては今後需要に沿った生産に推移していくと見られています。本年から新型「パトロール」をはじめ順次新車が投入されていくため、その販売状況次第で上振れる可能性があります。

北米ではハイブリッド需要が高まっているものの、北米でのe-POWERの生産はありません。今後も輸入が続くことから足元で北米での生産増加が難しく、今後も生産台数が維持される見通しです。

中期経営計画でも発表があったPHEVについては北米市場での販売が予定されていますが、三菱からのOEM供給が想定されています。

中国では順次NEVのモデルが投入されていくものの、「東風汽車」のプラットフォームの搭載が公表されており、日産全体における開発効率の改善が見込まれています。東風のシステムによるNEVの競争力に期待が集まっているものの、現在の中国市場で求められている安価なNEVおよびソフトウェアを搭載した車両の投入が短期的には難しい状況です。現時点では、過去の生産台数まで回復させることは困難と見られます。

三菱については、ASEANでの成長鈍化および中国系自動車メーカーとの競争激化により、生産台数の減少傾向が見られます。

日本では長期平均で年産40万台規模、そのうち約20万台は軽自動車が占めると見られています。ルノー、日産、三菱のアライアンスの力学により、一部欧州向けの小型モデルは日本からの生産と輸出がなくなり、ルノーからのOEM供給になったことが日本の生産台数が減った要因とされています。PHEVに関しては欧州での規制が徐々に強化されており、輸出減少リスクが拡大している状況です。

一方、アメリカ向けのPHEVに関しては需要の高まりを受け安定しており、生産台数の維持が見込まれています。

ASEANでは国内同様、短期的な年産平均は40万台規模であると想定されています。ASEAN地域内やオセアニアへの輸出を狙って経営資源を集中させていると考えられていますが、中国における足元の景気鈍化でASEAN全体の景気が落ち込んでいること、金利高が続いていること、三菱の主要市場であるタイにおけるローン審査の厳格化などを受けて需要の戻りが遅くなる見通しです。

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ホンダ・スズキの自動車生産台数推移

ホンダについては、中国では苦戦が続いているものの、北米におけるハイブリッドの好調によって全体の生産台数が微増すると見られています。全体として、現地で生産・販売する「地産地消」の生産戦略を今後も進めていく見込みです。

日本の生産は国内向けのモデル、とくにNボックスの生産を中心としながら、年産70万台規模を維持していく見通しです。また今年からBEVのモデルが投入されますが、今後ASEAN向けの輸出を想定したBEVモデルも登場すると見られており、その需要次第で上振れる可能性があります。

北米では足元でハイブリッドの需要増加が見られ、今後も安定した生産が見込まれています。さらに2025年後半より、BEV専用のプラットフォームを搭載したモデルも順次投入されていく見込みで、その需要次第で上方修正が行われる可能性があります。

中国では他の日系自動車メーカーと同様、今後も苦戦が続いていく見通しです。ホンダでは中国において独自開発のBEVを続けていますが、そのこだわりがリスク要因として捉えられています。今後は工場を再編しながら需要に見合った生産が続き、年産100万台規模で推移すると考えられます。

スズキについては、インド市場の成長や国内におけるダイハツの影響などを受けて、グローバルで安定した成長が期待されています。

日本では、短期的にダイハツの認証不正の影響により、2024年および2025年の生産台数は90万台以上を維持する見通しです。そして2026年以降、ダイハツのフルモデルチェンジ車が徐々に登場すると見られており、小型・軽自動車の市場の競争が激化する予想です。そのため2026年は、本年および来年との比較で生産台数の微減が想定されています。

日本国内のリスクとしては、軽自動車を筆頭に国内モデルが長期化しており、新型モデルがなかなか投入されず、今後の新車効果が得られずに競争力が低下するおそれがあります。

インドでは、市場の伸長に伴い成長していくと考えられています。ただし、短期的には在庫を多く抱えている状況から、生産調整が求められる可能性があります。一方、今後BEVの生産が開始されて欧州や日本への輸出も進められるため、その需要次第で上方修正の可能性もあります。

欧州ではモデルライフの長期化やBEV生産のキャンセルなどを受け、生産台数の挽回が難しい状況です。ASEANでは2025年にタイの工場が閉鎖されることに加えて、インドネシアやパキスタンの生産も苦戦しているため、今後の動向に注意が必要です。

マツダ・スバルの自動車生産台数推移

マツダについては生産台数の規模感を見たとき、自社開発のマルチパスウェイ戦略と生産増加の両立は難しいと推測されています。

国内生産は引き続き北米向け輸出の需要が安定しており、PHEVではリース販売であればIRAの補助金を受けられるため、今後もリース販売を増やしていく見込みです。

一方、ラージのSUVの開発が中心となっており、多くの生産台数が見込める中型、小型の開発は停滞している状況です。その結果、モデルサイクルが長くなっていることから、スモール群の競争力の低下から、生産台数の増加は難しいと見られています。

北米では2023年に雇用問題があり不安定な状況が続いていましたが、足元では安定した生産ができており、今後も同様に推移する見込みです。

中国ではBEVの事業が長安汽車との連携を深めており、自社開発から徐々に手を引いている状況です。今後の投入モデルも少なくなっており、中国で生産台数の拡大を図ることは難しいと考えられています。

スバルについては、トヨタと協業して短期的な電動化システムを運用していく中で、日本国内の年産は55万台規模と想定されます。主要な輸出先である北米でのBEVの需要鈍化に伴い、内燃機関モデルの輸出機会は拡大すると考えられています。

一方、2025年の中頃からフォレスターの北米市場向け車両がアメリカで生産されることから、日本・アメリカでの並行生産となっていきます。その日本の生産の補填としてアウトバックが日本生産になりますが、フォレスターの北米分すべてをアウトバックで補うことはできないと見られています。したがって、日本生産台数を見た場合には微減が想定されています。

北米では日本と同様に足元でICEの安定した需要があり、生産台数も維持される見込みです。一方、ZEV規制が採択されている州では再購入率(ロイヤリティ)が徐々に低下している傾向が見られており、乗り換えの選択肢が限られることがリスクとして考えられています。

まとめ:日本の各メーカーでは世界のBEV普及率鈍化への対応が急務

中国を除く地域でのBEVの普及スピードは、著しく鈍化しています。背景には消費者がBEVから離れつつあることや、収益面の課題が原因で開発が遅れている状況があり、BEVの将来は今後の政策動向に左右される可能性が高いです。

BEVの普及スピード鈍化は、短期的には日系メーカーにとって有利に働くと見られ、特に日本、北米、インドでの生産増加が期待されています。

一方、中国やASEAN市場は依然として課題が大きいです。中国メーカーが低価格帯BEVの販売で勢いを増しており、日系メーカーが十分な対策を講じられていないため、今後もこれらの市場で苦戦する見通しです。

以上を踏まえて、日本の自動車メーカーが短期的に再成長・再回復を図るためには、日本、北米、インドのマーケットシェアを維持するための効果的な戦略を打ち出せるかが重要です。

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