
【2024年版】OTA技術の現在地とトレンド
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本記事の内容に加えて、自動運転の最新情報や自動車の接続性に関する最新情報を解説しています。
近年、自動車業界ではソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)が注目を集めています。SDVを直訳すると「ソフトウェアに定義される自動車」、搭載されているソフトウェアによって自動車の性能が左右される、ということを意味しています。
従来はエンジンなどのハードウェアが自動車の性能を左右していましたが、SDVではソフトウェアが重要になっていると理解してください。
そのSDVにおいて、重要な要素が3つあります。
- 自動運転
- 車両の接続性
- OTA技術
本記事は上記の中でも、「OTA技術」の最新トレンドを詳細に解説しています。
SDVにおけるOTA技術の立ち位置
先述した通り、SDVにおいては重要な要素が3つあります。
- 自動運転
- 車両の接続性
- OTA技術
今回解説するOTA技術は、他の二つの要素である自動運転と車両の接続性をつなぐ重要な役割を果たします。OTA技術によってソフトウェアで定義された車両体験の実現を可能にします。
産業が進歩するにつれて、OTA技術は極めて重要な役割を果たし、不可欠な要素になると予想されています。
その他の要素について、自動運転については自動車の安全性を高め、運転体験を向上させるという役割を担っています。ADAS技術から完全自動運転まで、自動車への自動運転技術の導入が加速しています。
昨今では、開発のスピードや規模感を高めるために、パートナーシップを組むことが増えてきています。
また車両の接続性は自動車に未来をもたらし、スマートな機能を定義し、歴史的な自動車と差別化する役割を担っています。
自動車がソフトウェア的に定義されるためには、接続性が重要な役割を果たします。
OTA技術によるソフトウェアアップデートのプロセス
OTA(Over-the-Air)アップデートとは、ワイヤレス接続を介してデバイスにソフトウェア情報などを配布する技術です。ワイヤレス接続の安全性を担保するために、非常に複雑なプロセスを伴います。
ここからは具体的に、ソフトウェアアップデートが車両に展開されるまでのプロセスを解説します。
①ソフトウェアアップデートを準備する
まずはソフトウェアアップデートを準備します。
機能の追加やバグの解消、機能の強化など様々な内容のアップデートが想定されます。
②OEMのサーバーにアップデートを保存する
続いて、用意したソフトウェアアップデートをOEM(メーカー)のサーバーに保存します。
このサーバーはほとんどのケースで、クラウドサーバーを使用しています。
③データベースで車両情報などを確認する
続いて、ソフトウェアデータベースにて、既存のソフトウェアとアップデートを実施する車両の識別を実施します。
④テストと検証を実施する
続いてアップデートをテスト実施し、バグ等発生しないか検証をします。
その後、ようやく車両へとアップデートが展開されていきます。
⑤OTAアップデート
最後に、アップデートが適用されます。
この際、データは暗号化されて各車両に展開されます。暗号化されたデータは車両側のゲートウェイでチェックされ、セキュリティ性の高い通信リンクにてインストールが実施されます。
S&P Global Mobility イベントカレンダー
ソリューションウェビナーシリーズ、有識者イベントなど、様々なイベントの詳細はこちらからご覧いただけます。
SPGlobal.com/AutoCalendar_Japan
テスラのOTAアップデート事例
テスラは、2022年のV12への大型アップデートを筆頭に、マイナーアップデートを頻繁に実施しています。ここではいくつか事例を紹介します。
まずアップデートの内容には、下記のようなカテゴリーがあります。
- ADAS
- ユーザーインターフェースの改善
- 機能の更新
- バグ修正
上記の機能アップデートは同時に行わず、段階的に実施をしています。また一つのアップデートを進行しながらも、別のバージョンのアップデートも並行して実行しているため、アップデートが頻繁に行われています。
アップデートはアプリ経由で通知され、アップデートのスケジュールはユーザー側でコントロールすることが可能です。
アップデートの際には安定したWi-Fi接続が必要となり、インストール実行時には車両は作動しません。そのためスケジュール設定に注意が必要です。
また夜間に自動更新するなど、あらかじめスケジュールを設定しておくこともできます。
下記の図は、アップデート内容の事例です。テキストサイズを調整できるようにしたり、複数の言語に対応したりなどユーザービリティの向上や、FSD(フルセルフドライビング)と呼ばれる完全自動運転機能の追加など、様々なアップデートがあります。
下記の図は、テスラがアップデートを行ったタイミングや回数について記載しています。
図の上部、Major Updatesは年間で13回実施されています。新機能やシステムのアップデート、FSD(フルセルフドライビング)のアップデートなど大型のアップデートとなります。
図の下部、Minor Improvements and Bug Fixは年間で120回も実施されています。細かい改善やバグの解消などがこれに当たります。先述の通り、すべてのアップデートがすべての車両に同時展開されることはありません。車両によって選別されたアップデートの内容が、段階的に実施されていきます。
ここからは大型アップデートについてもう少し着目して、「2023.07」と「2023.26」の内容について紹介します。
【2023.07の内容】
- FSD Beta のバージョンを4.1から11.4.7へ
- 短距離での車線変更の改善
- 静的な障害物を制御する際のオフセットの一貫性の改善
- 対向車のハンドリングを改善(米国とカリフォルニア州のみ)
- リバースカメラの実装
- 車両が後退している間、カメラは常に画面に表示されたままになります
- サービスモードの改善
【2023.26の内容】
- フロントガラスワイパー制御
- スクロールホイール機能で制御できるオプションのリストに追加されました
- スクロールホイールのカスタマイズ
- ブラインドスポットカメラ
- タッチスクリーン上の別の場所にブラインドスポットカメラをドラッグできるようになりました
- マイナーな修正と改善
- より暖色のカラーディスプレイ
- Bluetoothゲームコントローラの接続
- 目的地がすぐに閉じ、ナビゲーションの下に通知を表示
まとめ:OTA技術はSDVにとって重要な改善をもたらす
解説してきた通り、OTAによって改善される車両の機能としては下記のように分類されます。
- ADAS / パフォーマンス
- ADASシステムの継続的な改善
- バッテリー、推進システム、サスペンションなどのコアシステムの性能アップグレード
- 機能アップデート
- ソフトウェアの新機能と改良
- 言語追加などの主要機能の更新
- 新しいアプリケーション、ナビゲーションシステムの改良
- 接続性の向上など
- ユーザーインターフェース
- 使いやすさとクオリティ・オブ・ライフのアップデートのためのユーザー・インターフェースの改善
- 顧客満足度とユーザー・エクスペリエンスの向上
- バグの解消
- バグフィックスや安全性のアップデート
- 古くなったソフトウェアのセキュリティ向上
上記のとおりOTAアップデートでは全体的な機能セットを強化し、車両にとって不可欠なアップデートを提供する上で重要な役割を果たしています。
自動車産業がSDVへの移行を加速させる中、OTA の重要性はますます高まっています。OTAのアップデートについて理解し、今後の分析に活かしてください。
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